桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

それからは、一方的に陽向を遠ざけた。

一切、口を聞いてないし目も合わせていない。

陽向からくるメッセージや電話も全部無視した。

隣の席なのに、遠くにいるように感じる。

まるで、私たちの間に見えない硬くて頑丈な壁ができてしまったかのように。

朝、陽向と一緒に登校することも一緒に帰ることも一緒に弁当食べることもなくなった。

あれから、何度も自分に言い聞かせた。

今まで陽向と一緒に過ごした時間は、全部幻だったんだって。

『蒼は1人じゃない。どんな時だって、俺が傍にいるから。なにがあっても絶対に蒼を守るよ。だから大丈夫。もう大丈夫だよ。蒼』

泣いている私に、包み込むように抱きしめてくれたことも‥‥‥。

『‥‥‥ずっと、傍にいてくれる?』

『もちろんだよ。ずっと蒼の傍にいるよ』

私を安心させてくれたことも‥‥‥。

『蒼、俺の傍から離れないで』

そう言って、はぐれないように手を繋いでくれたことも‥‥‥。

『もう悲しまなくて大丈夫だよ。俺がついてるから』

その言葉も全部、嘘だったんだって。

陽向は、好きな人がいながらも私に優しくしてくれていたんだって。
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