桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

すれ違う距離


美菜に電話をかけてみることにした。

蒼のことなにか知っているんじゃないかって。

「美菜、教えて欲しいんだ。蒼がどうして俺を避けるのか。なにに対して怒ってるのか知りたいんだ」

『‥‥‥蒼は、陽向に対して怒ってるの』

それは蒼の態度からして分かるんだけど、その怒る理由が分からない。

「だから、どうして?」

『‥‥‥この前、陽向は中庭で2年生の人から告白されたでしょ?』

「なんで、それを?」

知らないはずなのに。

『あの時、蒼は見てたの。見てしまったの。知りたくないことを陽向の口から聞いてしまったの!』

蒼が見ていたなんて知らなかった。

それに‥‥‥。

「知りたくないこと? 俺、なんか言ったっけ?」

蒼を傷つけるようなこと‥‥‥。

そう訊ねると、めちゃくちゃ怒られた。

『陽向、バカなの? そんなことも分からないの? 陽向って、最低だよ! 散々、蒼のこと振り回しといて別に好きな子がいるってどういうことなの⁉︎』

「ちょっ、美菜! それ誤解だよ」

俺の好きな子は、たった1人しかいない。

蒼しかいないんだよ。

『なにが誤解よ⁉︎ 陽向がそう言ったんでしょ!』

好きな子がいるって言ったけど、蒼とは別に好きな子がいるとは言ってない。

「だから、違うんだって!」

『なにも違わないよ! 蒼を傷つけるなんてほんと最低! もう陽向のことなんて知らない‼︎』

ーーブツッ。

電話を切られた。

「‥‥‥っ」

蒼だけじゃなく、美菜まで傷つけてしまった。

俺は、どうすればいい?

どうしたら分かってもらえる?

正直、とても焦ってる。
< 164 / 209 >

この作品をシェア

pagetop