桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「私も陽向のことが好きだから」

その言葉に、陽向の目から一筋の涙が流れた。

「あの時、陽向がどん底にいた私を救ってくれたから今の私がいる。どんな時でも陽向が傍にいて支えてくれたから、前を向くことができたんだよ。大切な友達もできた。心から笑うことができた。全部、陽向のおかげだよ」

陽向は、私の失ってしまったものを1つずつ取り戻してくれた。

「ありがとう。本当に、ありがとう」

何度、感謝の気持ちを伝えても伝えきれない。

「それに、私だって陽向と離れて苦しかった。そうしてしまったのは、私だけど‥‥‥陽向には、ずっと前から好きな人がいるって知って正直辛かった。その好きな人は、高校入学式で出会った私じゃないと思ったから。だから、陽向を諦めなきゃいけないって思って、何度も陽向のこと嫌いになろうとしたけど、結局はムリだった。日に日に好きが増してたの」

陽向のこと嫌いになろうとしても辛くて、それどころか好きが溢れて辛かった。

「それで今日、美菜に陽向のことで相談しに、学校帰りに美菜のお家に寄ったんだ。その時、アルバムを見せてくれて全てを思い出したの。私たちは、7年前のあの日に出会ってるんだって。事故直後、私に駆けつけてくれた男の子は陽向だったんだって。そう分かって嬉しかった。涙が止まらなかった。こんなに人を好きになったのは初めてで、自分でも戸惑ってるけど、私、陽向がいなきゃダメなの。陽向の隣にいたいよ」

そう言い終わると同時に、陽向に抱きしめられた。

「蒼」

久しぶりに感じる陽向の温もり。

「陽向」

私は、陽向の背中に腕をまわした。

「もう蒼を離したりなんてしない、絶対に」

「私も陽向から離れたりなんてしない。だって、こんなにも好きなんだもん」

まるで、あの日と同じようにお互いを抱きしめ合った。
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