桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「全部、私のせいなの。私が『水族館に行きたい』なんて我儘を言ったから‥‥‥私が交差点に足を踏み入れてしまったから‥‥‥私のせいで、お父さんが亡くなってしまったの」

「それは違うよ」

今まで静かに私の話に耳を傾けてくれていた陽向くんが言葉を発した。

「で、でも‥‥‥!」

こうなってしまった事に変わりはない。

全部、私がいけなかったんだ‥‥‥。

そう伝えようと陽向くんを見る。

けれど、陽向くんは私の目をしっかりと見て慰めるようにゆっくりと言った。

「蒼のせいなんかじゃないよ。蒼は、なにも悪くない。だから、自分を責めないで」

陽向くんは、私を優しく包み込んだ。

「‥‥‥私のせい、じゃないの?」

「うん。誰がなんと言おうと蒼のせいじゃないよ。きっと」

「陽向くん‥‥‥」

頬に触れるのは雨で濡れて冷たくなった白いシャツ。

でも、そのシャツ越しに伝わる温かいぬくもり。

「‥‥‥っ‥‥‥」

陽向くんに縋るかのように白いシャツをキュッと掴んだ。

「大丈夫だよ、蒼」

こんなにも弱い私を陽向くんはすんなり受け入れてくれて頭を優しく撫でてくれる。

陽向くんに抱きしめられると涙が止まらなくなる。

この雨と一緒に泣いた。
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