学園怪談
「あ~あ~、雅兄ちゃん、そんなにたくさんスイカを食べたらお腹壊しちゃうよ」
「大丈夫だって~、俺は鉄の胃袋をもつ男なんだから」
 雅兄ちゃんは、一人でスイカ大玉一個をまるまる食べきってしまったのです。
「す、凄いよ雅兄ちゃん。でも本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって。いや~うまかった。うまかった」
 彼は細身の体に似合わない、少しポッコリしたお腹を擦りながら、ゴロリと畳に横になっていました。
……しかし、しばらくして雅兄ちゃんは腹痛を訴えたのです。
「あっ、いててて。ううう、くそ、腹が……」
「だ、大丈夫? お母さん達に帰ってきてくれるように連絡しようか?」
 この日の夜、私達二人と、ほか数名の小学生の従兄弟連中は留守番でした。大人はみんな近所の大地主さんの所に出かけて行ってしまっていました。
「大丈夫だ。ちょっと冷えただけだろう。何か薬でもないかな?」
 とはいえ、ど田舎の山の中。それに元気なお婆ちゃんだから、家に薬があるだろうかと思いながらも救急箱を探す。
「あ、あった」
 仏壇の近くの棚に、今時珍しい古びた木製の救急箱が置いてあった。木箱の側面に描かれた掠れた赤い十字マークがなかったら、見落としてしまったかもしれない。
「でも、何か古そうだな~、ちゃんと入ってるのかな」
 私は薬箱を開けた。
 中には一番上に開けかけの湿布薬の袋がいくつか横にされて入っていた。そして、その下をめくると、赤チン、綿棒、ガーゼ、使いかけの包帯、ステンレス製のハサミ、そして、いくつかの古くさい箱がいくらかと、チューブタイプの塗り薬が2つ程入っていた。
 湿布は頻繁に使われているようだが、その他の薬については長年放置され続けていたように思える。
「いててて、どうだ。腹痛の薬はあるか?」
 雅兄ちゃんも薬箱の側に寄ると、アレコレと物色を始めた。
 頭痛薬、風邪薬、火傷の薬……どれも見たことのない薬ばかりだった。よくよく見ると使用期限も10年以上過ぎているものばかりだった。
「あらら、こりゃダメそうだね雅兄ちゃん」
 しかし、私の言葉を他所に、雅兄ちゃんは最下層に入っていたのか、何やら茶色の小さな箱を取り出した。
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