学園怪談
それとなく年齢差で諦めさせようと試みたものの、それは何の効果もなかった。
「大丈夫! きっと、きっと想い続ければ先生だって振り向いてくれるよ。だってわかるんだもん。私と先生は前世から繋がっていたの。この世でも将来を誓ったんだもん」
「はいはい」
夢見る乙女特有の病気に、稲垣は適当な相槌を打っておいた。
……瀧川の想いが井坂に届く事はもちろんなく、ありふれた日常がしばらく続いた6月の半ばのこと……。
学園中が梅雨のせいでジメジメし、近く迫った実力テストへのストレスも高まり、生徒たちの不快指数が一気に上がっている中、ひとり明らかに上機嫌な女生徒がいた。
「うふふ」
稲垣は、最近妙に機嫌のいい瀧川に尋ねた。
「どうしたの樹里? 最近なんだか、ご機嫌じゃない?」
「うふ。わかる~? 実はね……」
瀧川はここ最近、毎日のように夢を見た。その内容は井坂とラブラブな関係になっているという禁断の愛なのだった。
「まあ夢なら害はないからね。よかったじゃない」
「えへ。これも全部、バクの爪のおかげだよ」
先日、瀧川は理科室の掃除をしていて、標本の棚の奥に転がり落ちていた『バクの爪』というアイテムを手に入れた。
バクはサイに似た哺乳類で南アメリカ等に棲息している。しかし、このバクの爪は、もう一つのバク……つまり中国の伝説上の動物で、人の悪夢を食べるという、あのバクの物であるというのだ。悪夢を食べるバクの爪には、反対の幸せな夢が宿っているというのである。
まるで通信販売か何かのまがい物商品のようだが、それを身につけた瀧川に幸福な夢が訪れているのだから、本当に効力はあるのかもしれない。
「よかった。毎日先生と一緒で嬉しい」
瀧川はそれからも毎日夢を見た。いつも井坂と一緒に過ごせる甘い夢を見て、現実に戻るたびに夢のもどかしさを実感した。
……ある日のこと。
「幸一さ……あ、いえ。井坂先生。明日の連絡事項……」
瀧川は職員室で、連絡事項を聞く際に、幸一という井坂の名前を不意に口にしてしまった。
「び、びっくりした! ちょっと樹里! なんで先生の事を名前で呼んだのよ?」
慌てて瀧川を廊下に連れ出した稲垣は、赤い顔で俯く瀧川を問い詰めた。
「大丈夫! きっと、きっと想い続ければ先生だって振り向いてくれるよ。だってわかるんだもん。私と先生は前世から繋がっていたの。この世でも将来を誓ったんだもん」
「はいはい」
夢見る乙女特有の病気に、稲垣は適当な相槌を打っておいた。
……瀧川の想いが井坂に届く事はもちろんなく、ありふれた日常がしばらく続いた6月の半ばのこと……。
学園中が梅雨のせいでジメジメし、近く迫った実力テストへのストレスも高まり、生徒たちの不快指数が一気に上がっている中、ひとり明らかに上機嫌な女生徒がいた。
「うふふ」
稲垣は、最近妙に機嫌のいい瀧川に尋ねた。
「どうしたの樹里? 最近なんだか、ご機嫌じゃない?」
「うふ。わかる~? 実はね……」
瀧川はここ最近、毎日のように夢を見た。その内容は井坂とラブラブな関係になっているという禁断の愛なのだった。
「まあ夢なら害はないからね。よかったじゃない」
「えへ。これも全部、バクの爪のおかげだよ」
先日、瀧川は理科室の掃除をしていて、標本の棚の奥に転がり落ちていた『バクの爪』というアイテムを手に入れた。
バクはサイに似た哺乳類で南アメリカ等に棲息している。しかし、このバクの爪は、もう一つのバク……つまり中国の伝説上の動物で、人の悪夢を食べるという、あのバクの物であるというのだ。悪夢を食べるバクの爪には、反対の幸せな夢が宿っているというのである。
まるで通信販売か何かのまがい物商品のようだが、それを身につけた瀧川に幸福な夢が訪れているのだから、本当に効力はあるのかもしれない。
「よかった。毎日先生と一緒で嬉しい」
瀧川はそれからも毎日夢を見た。いつも井坂と一緒に過ごせる甘い夢を見て、現実に戻るたびに夢のもどかしさを実感した。
……ある日のこと。
「幸一さ……あ、いえ。井坂先生。明日の連絡事項……」
瀧川は職員室で、連絡事項を聞く際に、幸一という井坂の名前を不意に口にしてしまった。
「び、びっくりした! ちょっと樹里! なんで先生の事を名前で呼んだのよ?」
慌てて瀧川を廊下に連れ出した稲垣は、赤い顔で俯く瀧川を問い詰めた。