君が生きていれば、それだけで良かった。
「家こっちなんだ。お寺の横。ほら」
縁川天晴が指さす先には、一軒家があった。彼はそこへ向かってゆっくり歩いていく。歩幅が小さくて、のんびりした足取りだ。
手ぶらで歩くなんて何年ぶりだろう。
出演するドラマの台本を読むだけじゃなく、原作があればそれをチェックするのももちろんだけど、SNSでファンの評判をチェックして次に生かしたりとか、事務所の人と連絡を取ったりとか……行儀が悪いけどスマホは手放せなかった。
ただ車に乗っただけなのも、久しぶりだ。