彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
collapse of ploy 里美





初めて彼を見たのは大学のサークルのOB会だった。
その時彼には彼女がいたけれど、私はどうしても諦めることが出来なかった。
卒業後に選んだ就職先はもちろん彼のいる会社。
いつか彼の心を私に向かせてみせる、そう決めて3年。

ーーー私はようやく彼の恋人になることが出来たーーー



朝、ネクタイを締める彼に声を掛けた。
今日から彼は出張だ。

「先週言いましたけど、今日は弥生と萌絵と女子会してくるね」
「ああ、覚えてるよ。気をつけて行っておいで。でもアルコールは飲むなよ」
「はあーい、わかってます。センパイも出張気をつけてくださいね」

行ってらっしゃいのハグとキスをして出張先の大阪に向かうため彼は私より一足先にマンションを出た。

窓から身を乗り出し、マンションのエントランスから出てきた彼にぶんぶんと大きく手を振って見送ると、それに気づいた彼も手を振り返してくれる。

ああ~、なんて幸せ。

二週間前から私は稔先輩の部屋で半同棲している。
妊娠検査薬が陽性を示したことで彼はすっかり父親モードだ。
付き合っていた早希センパイとも直ぐさま手を切ってくれて、私にプロポーズしてくれた。

後は両方の実家に挨拶に行き指輪を買って、式場を探してーーーうふふ


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