彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
自社の会長、社長、副社長、重役はもちろん、国内有数の大企業から海外企業の役職持ち、果ては大使館関係の人まで。
外国人もたくさん。
年齢層も幅広く、同世代から高齢者まで。

この二人の付き合いの広さがわかるってものだ。

私の隣に立つ竜之介。
私とは高校の同級生という関係だけど、高校時代はただのクラスメートでそれほど親しくもなかったから彼の家庭がそんなに上流階級なんだとはこの件までは知らなかった。

高校卒業後、別の大学に進学し、私は卒業後この会社に就職。竜は大学院卒業後、ここに就職したから同級生だけど同期ではない。

会社で再会して、高校時代の同級生という気安さでたまに飲みに行く間柄になった。

その後、たまたま一緒にいるところに偶然常務と出会って、竜と常務が甥と伯父の関係だと教えてもらった。

「コネ入社だと思われるとしゃくだから言うなよ」と口止めされた。きちんと入社試験をして入ったからコネは使っていないと主張だ。
竜の母親が常務の妹という関係で名字が違うため上層部以外ではまだ誰にも気づかれていないらしい。
顔も似てないし。

大事なことだからもう一度、
常務と竜の顔は全く似ていない。



「竜之介」

主役の二人が竜に向かって近付いてきた。
光沢のあるアイボリーのスーツを着こなした高橋良樹さん。
こちらに向ける穏やかな笑顔を見ると竜との親しさが伝わってくる。

その隣には背の高いアームブーケを手にドレスの裾を綺麗にさばいて歩く薔薇姫。

今日はとびきり光り輝いて見える。
隣に立つ高橋さんと並んでいる姿はまるで映画のワンシーンのよう。
そのままウェディングモデルとしてもいける。

「忙しいのに悪いな」
「いいえ。良樹さんと佐本・・・高橋先輩のお祝いですから」

背が高く肩幅もある運動部系の高橋さんと比べると竜は痩せて見えるけれど、竜も一般的な男性と比べると、身長はあるし、顔も一級品だ。

「柴田君」

透き通った声が竜を呼び、竜の視線が高橋さんから姫に移る。
竜の表情が明らかに優しくなった。

「本日はおめでとうございます。あちこちで男性陣が酔っ払ってるのは高橋センパイのせいですね。良樹さんはさぞかし恨まれていることでしょう」

竜がくくっと笑うと、姫が「そんなことないわよ、恨まれてるのは私の方」とクスクスと笑った。

「この人、”独身御三家”って言われてたんですってね。菊田ちゃんに教えてもらったの」

それは私も知ってる。
独身御三家は康史副社長、林社長秘書、そしてこの国内営業部の高橋良樹さん。

それが今や全崩壊。
康史副社長は常務秘書と婚約中。林社長秘書はイタリアの支社長になって栄転。高橋さんは我が社の薔薇姫と電撃結婚。

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