彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
まずい、本格的に麻由子を怒らせてしまったかも。
それより、麻由子を傷つけてしまったかも。

バスルームのドアをノックしたが返事はなく。

「麻由子、出ておいで」
声を掛けても返事はない。

「麻由子。ごめん、悪かった。謝るから、出てきて顔を見せてくれないか」

「ーーー何に対して謝ってるの」

ドアの向こうから麻由子のくぐもった声が聞こえた。

「からかったこと。いや、うちの大事な奥さんにきちんと愛情を伝え切れていなかったことだな。俺の奥さん、そこから出てきてくれないか」

「・・・・」

「麻由子、大好きだ、愛してる。本当は健斗と麻由子が並んでいるところを見るだけでいつも舌打ちしたくなってた。頼むから出てきて抱きしめさせてくれ」

「・・・ホント?」

「こんな恥ずかしい嘘はつかない」

「ホントに私のこと好き?」

「お前だけだよ」

カチャリと音がした。
バスルームの鍵は開いたようだけど、麻由子は出てこない。

近付いてそっとドアを開けてみると麻由子は床に三角座りをして顔を両膝の間に埋めていた。

恥ずかしいから出て行けない、おそらくそんなところだろう。
うちの妻は本当に可愛らしい。

麻由子の膝下と背中に手を回し、よっとかけ声を掛けて抱き上げた。
きゃっと小さな悲鳴が聞こえて両腕が俺の首に回され、そういえば麻由子はお姫様抱っこが好きだったなと思い出した。

バスルームを出て広々とした大きなソファーに座る。
もちろん麻由子は俺の膝の上だ。
かわいそうに大理石の床に座り込んでいたせいで麻由子の身体は冷えていた。

それから麻由子が音を上げるまで延々と愛を囁き抱きしめたーーー





あかよろし
















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