政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
そんな探偵みたいな真似、普通できない。
対象にはバレなくても、長時間同じ場所に留まって見張っていたら近隣の人からは不審に思われるだろうし、実際盛岡さんは国木田さんに不審がられて蓮見さんに正体まで調べ上げられたのだから、プロじゃないと難しいと思う。
私も中等部の頃、兄と一緒に一度真似事をしたけれど、ものすごい緊張した覚えがある。
「たしかに〝盛岡ハウジング〟から提携の打診は何度かあった。なにかゆするネタ欲しさに俺の周りを嗅ぎまわっていたんだろう。そこで春乃が同じマンションに入っていくのを見かけて、何度かつけて確証を得た。マンションを出た春乃のあとをつければ勤め先もわかる上、うまく客を装えば名前もわかる」
「悪いことしようとしたら結構簡単にできちゃうんですね」
「好奇心で調べたところで、実際に行動にまで移す人間は少ないと思っていたが……そうでもないのかもしれないな」
息をついた蓮見さんの脳裏には、柳原さんと盛岡さんの顔が浮かんでいるのだろうとわかった。
「あの、すみませんでした。うちの社の商品を気に入ってくれて教えて欲しいって言われたら、気持ちが浮ついてしまって……軽率でした」
「別に春乃が悪いわけじゃない。ああいうやり方をされたらどうにもできないし、最低限の警戒や報告をしていたのならそれでいい」
蓮見さんは私のせいじゃないと微笑みを向けてくれたけれど、私の行動のせいで午後の予定を潰させてしまった。
忙しい中、仕事を切り上げてきてくれたのに、と思うと申し訳なさは消せない。