政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「もしかして、私はあまり信用されていませんか?」
大祐さんからしたら、私は十年ふらふらして会いにこなかったことになるし、それでも仕方ないのかもしれない。
でも、だからって大祐さんと結婚した今、他の人にふらふらなびくことなんてあるはずがないのに。
そう思い見ていると、大祐さんはチラッとこちらに視線をよこし、また前を向いた。
「過去、深い付き合いがあった男に好意を寄せられてほだされないとは言い切れない。春乃個人の話ではなく男女限らずそういう傾向にあると考えるだけだ」
言い方は硬いけれど、つまり私を責めているわけでも疑っているわけでもないという意味だとわかった。
「ほだされやすいって部分は否定しません。庇われたり優しくされると嬉しいし、いくら単純と言われようがやっぱり好意は抱きます。でも、それが恋愛感情に繋がることは今後はありません」
赤信号で車が止まる。
ブレーキを踏んでからこちらに視線を向けた大祐さんに、笑顔を浮かべた。
「もう、恋愛に繋がるルートは大祐さんで埋まっているので。それに、大祐さんが私を想ってくれている間は私は大祐さんにほだされ続けると思うので、心移りなんて本当にいらない心配です」
目を合わせて笑った私に、大祐さんも口の端を上げる。