愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
「……全然モテなかったんです」

わたしの外見は、“The日本人”。
太ってはいないけれど、身長は一五六センチと小さく、手も足も長さは日本人そのもの。
そのうえ真っ黒な髪は、あご下ですっぱりと切りそろえられ、前髪も眉毛の上で真横にぱっつんと揃えてある。それすなわち、『おかっぱ』。

物心ついた時にはもうこの髪型で、子どもの頃はよく「市松」とか「こけし」とか言われて揶揄われた。高校大学の頃には、何度か髪形を変えようとしたことがあったのだけど、あまり上手くいったことがなくて、髪形迷子のままロンドンまでやって来た。

髪型をはじめ、体形から何からすべてが成育不良(・・・・)なわたしは、年頃の男子たちの恋愛対象にはならなかったらしい。
そのうえ所属するゼミは女の園で、結局わたしは大学生活のほとんどを、大好きな西洋文学とハーブに費やしたのだった。

「ロンドンの男どもからは誘われなかったのか?」

「はい。わたしは彼らから見るとどう見ても、『こども』にしか見えないみたいですね……」

こっちに来てからみんながわたしにくれる『so cute(かわいい)!』という褒め言葉は、幼いこどもや小動物に向けられるのと同類だということに、割と早いうちに気が付いた。
よほどのロリコンじゃない限り、わたしのことを異性として見てくれる人はこの地にもいなかったのだ。

「日本にいる妹なら、わたしと違って昔からすごくモテるんですけど……」

ひとつしか歳が違わない妹との差に、我ながら悲しくなってくる。

「とにかくまあ、わたしは昔からこんななので、『女性』としては見られないようです」

「あはは」と乾いた笑いをこぼすと、祥さんは「そうか」と言ったきり口をつぐんだ。
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