愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
戸惑いの蜜月
[1]

「天窓よし!窓の締め忘れも……なし、ね」

小さなガラス温室を見回して、わたしは「よし!」と小さく頷いた。

五月も終わりに近づいて、日中の陽射しがきつくなってきた。夕方五時を回り、西日は葉桜がほどよく防いでくれているけれど、閉め切ってしまうと少しもわっとしてしまう。

温室の気温が上がりすぎるのを防ぐため昼間は窓をすべて開け放っておいて、日暮れ前にそれを閉めて寒暖差から植物を守る。温室の窓の開閉は、わたしがこの家で出来る数少ない仕事だった。


名字が『森』から『香月』に変わってから二週間。
わたしは、福岡での仕事を終えた祥さんと一緒に東京の彼の自宅へとやって来ていた。

このひと月の間に、ロンドン、福岡、東京、と目まぐるしく転居していることに自分でも驚いているのに、彼の自宅で始まった暮しはさらに驚きの連続。

羽田空港から乗ったタクシーの中で、ビル群に圧倒されたのもつかのま。タクシーが停められたのは超高級住宅街だった。
それだけでも驚くのに、さらにタクシーから降りてすぐ目に飛び込んできたものに、思わず声を上げて驚いた。
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