愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
わたしの身長の倍はありそうな高い塀。
重厚な門扉の上部には、防犯カメラに警備会社のステッカーもある。

こんな豪邸にわたしが住むの!?

思わずそう叫びそうになったけれど、同時に頭によぎった疑問に冷汗がにじんだ。

きっと彼のご両親もこちらにお住まいなのだ。

てっきり祥さんは超高層マンションに一人暮らしで、そこにわたしがお邪魔する形になのだろうと思い込んでいた。まさかご両親と同居だなんて。

別にご両親との同居が嫌なわけじゃない。
ただ、前もってそのことを聞いていなかったから、何の心構えも出来ていなくて焦ったのだ。

それにご両親にとってみたら顔も知らない嫁が来るのだ。きっと少なからず思うところがあるはず。どんなに祥さんが『問題ない』と言ってくれても、気に入られなかったらどうしようと不安に思わないわけはない。

なりゆきでこんな形になってしまったけれど、籍を入れたからにはわたしは香月家の嫁。叱責も覚悟のうえで、きちんとご挨拶して非礼をお詫びしなければ。

彼がそうしてくれたように。


博多を離れる直前、わたしたちは揃って【森乃や】へと赴いていた。

祥さんは婚姻届けに署名を貰う時に母と直接会って話をしたようだけど、わたしは顔を合わせていない。さすがに親の顔も見ず電話一本で『嫁に行くからさようなら』というわけにはいかないと思った。

わたしがそう言うと、彼は『もちろん、東京に戻る前にきちんとご挨拶に伺うつもりだった』と言ってくれた。
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