愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
門と塀の立派さから始まり、その中に建てられた屋敷の大きさ、週三回の家事代行。
祥さんと出会ってから今日まで、本当に驚かされることばかりだ。

取るものも取り敢えず、嫁入り道具などひとつも持たずに輿入れしたはずなのに、なぜかわたしにあてがわれた部屋の一角には素敵なドレッサーも置かれていて、クロゼットの中には、生活に必要なものがすべてそろっていた。

このガラス温室だってそう。

広い庭の一角にあるこのガラス温室は、家庭菜園が趣味だというお母さまのものだったらしい。
【チェルシー薬草園】の温室にどこか似た雰囲気を持つこの温室。
わたしがロンドンで間借りしていた社員用の部屋の倍はあろうかという広さで、室内には使い勝手の良さそうな洗い場や、除湿や遮光の設備や小さなスプリンクラーまである。

ボタンひとつで開閉自動する天窓は、暑くなるこれからの時期に室内の気温が上がりすぎないよう風を通すのに大活躍するだろう。

とても趣味レベルとは思えない充実ぶり。それなのに一年以上(あるじ)不在のせいで閑散としていてもの悲しい。
わたしはさっそく祥さんから許可をもらって、空の鉢植えにいくつかのハーブを植えたのだ。
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