愛のない結婚のはずが、御曹司は懐妊妻に独占欲を放つ【憧れの溺愛シリーズ】
ローズマリー、バジル、ミントは種で。種蒔きの時期が過ぎていたカモミールやタイム、ラベンダーは苗を買ってきた。どれもメジャーなハーブなので、日本でもわりと簡単に手に入る。

本当はもっと色々と植えたいのだけれど、さすがに嫁に来たばかりなのに、温室をハーブだらけにするのは気が引ける。
たとえそうなっても祥さんは文句を言わない気がしたけれど、とりあえず様子を見ながら増やしていけばいいと思う。

「あなたが芽を出す頃には、もう少し奥さんらしくなれてるのかなぁ……」

カモミールのプランターの前にしゃがみ込んで、種が埋まっている土に語り掛ける。そうでもしないと、『話す』ということを忘れてしまいそうだった。

本格的に結婚生活が始まったというのに、この二週間彼はほとんど家に居ない。
彼は毎日、朝食もそこそこに朝早くから仕事に行き、帰宅も遅い。
夕食を一緒に取ったのは数えるほどで、泊りがけの出張も多く、数日間顔を合わせないこともざら。実際今も香港へ行っている。

いつもこんなに忙しい人なのだろうか、彼は。ホテル経営の知り合いなんて居るはずもなく、どんなお仕事なのかなんてさっぱり分からない。
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