一日限定カップル〜10年後〜
『はい10分休憩してください』

放送がかかると、班長は

「手を止めろよー」

と班内にいるすべての人間に聞こえるように叫んでいた。

「尚志、行くよ〜」

隣の区の環が尚志を誘う。

尚志は私を見て

「一緒に行く?」

私は頷くと尚志は防寒着ともう1枚、薄手の上着を手に取った。

「ボクもー!!」

アカリも自分の上着を羽織った。

自販機で飲み物を買い、食堂で飲まずに屋上へ。

ここに灰皿が置かれていてタバコを吸う人は寒い冬空の下、ここに隔離されるとの事だった。

「付き合わせてごめん」

尚志はそう言って自分の防寒着を私に着せた。

「あ、でもこれじゃあ、三木くんが…」

「俺は慣れてるからこれで十分だよ」

笑って尚志は薄手の上着を羽織った。

防寒着には尚志の香りが染み付いていて。

ふと。

10年前のあの日を思い出した。
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