エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「……ごめんなさい」

「医者の指示を甘くみるな。なにかあったら取り返しがつかないんだぞ」

 幼なじみでもある清司郎は、普段はこんな風に頭ごなしに千春を叱ることはあまりない。でも今は仕方がないと千春は思った。
 彼は千春の主治医でもあるのだから。
 退院の時に、彼からは許可があるまでは外出も控えて家で安静にするようにとしつこいくらいに念を押された。
 それなのに千春は、たった一週間でその指示に背いたのだ。
 清司郎が深いため息をついた。

「まぁ今回のことはお前の意志じゃなかったみたいだが、でもどうしてあんなことになる前に俺に言わなか……」

「それより清君。ここはどこ?」

 彼の言葉を遮って、千春は窓の外を見る。
 清司郎が不満そうに口を閉じた。
 大きな木が生い茂る緑豊かな庭は、もう日が傾いていた。その木々の間から小さく見える建物に、千春は見覚えがある。

「あれは……病院?」

 千春が人生の半分以上を過ごしてきた『八神総合病院』だ。
 そういえばさっきのホテルで清司郎は叔父に『病院へ連れていく』と言っていた。
 でもここから病院が見えるということは……?

「俺の家だ」

 清司郎が答えた。

「病院じゃ、またあいつらが来ないとも限らないからな。ゆっくり静養することもできないだろう。安心しろ、在宅医療のチームを要請したからできることは病院とほとんど変わらない」
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