エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~

夏彦の指摘

 晴れた空の下行われているパーティーで、清司郎はたくさんの出席者に囲まれてたくさんの質問に答えている。少し疲労を感じてはいるものの、心は充実感に満たされていた。

 質問内容のほとんどが千春の手術に関するものだからだ。
 今日の出席者の中には若い医師もたくさんいて、皆手術の詳細を知りたがっている。
 公演や講義をしてくれという依頼も少なからずあった。
 清司郎はそれをありがたい気持ちで受け止めた。

 千春の症例は珍しい。
 それでも日本にはたくさんの患者がいて、これからも一定数の子供たちは同じ病気を抱えて生まれてくるだろう。
 多くの医師が清司郎と同じ技術と知識を身につければ、それだけたくさんの命が救われるのだ。
 清司郎がこの道を志したのは、千春を救いたい一心だった。
 でもそれが結果的に誰かに幸せをもたらすものであるならば嬉しいと心から思う。

 清司郎は会場の片隅に視線を移す。千春がいるはずの場所だった。
 千春がいたから今の清司郎がある。たくさんの人の役に立つことができている。この思いを彼女にそのまま伝えたかった。
 だがさっきまで熱心にパネルを読み込んでいたはずの千春の姿がなぜかない。

 手洗いにでも行ったのだろうか。

 眉間にシワを寄せて清司郎が会場全体に視線をさまよわせていると、突然肩を掴まれた。

「八神、久しぶりじゃないか」

 医学部時代の先輩だった。

「お久しぶりです」

「お前大活躍じゃないか」

 ここへ来てから何度も言われたその言葉に、清司郎は首を横に振った。

「そうでもありませんよ」

「またまたー」
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