エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
別れの時
「ありがとうございました。失礼します」

 頭を下げて診察室を出ると千春はゆっくりと扉を閉める。廊下に出てホッと息を吐いた。
 八神総合病院の心臓外科の診察室である。
 今日は退院してから二回目の検査の日だった。
 術後の経過は順調で、これからは半年に一度定期検診を受けるだけで普通の人と同じように日常生活を送ることができるという。
 清司郎の口から出たその喜ばしい事実を千春は複雑な気持ちで受け止めた。

 これで本当に未来への道が開かれた。
 これからは自由に生きてゆけるのだ。

 でもそれは同時に清司郎との別れを意味している。
 その日はもうすぐそこまで近づいているのだろう。
 千春はゆっくりと歩き出し、病院のエントランスを目指す。途中、売店の入口にあるラックの情報誌が目に入り立ち寄った。
 無料の求人情報誌だ。
 ひとりで生きていくなら、なにか自分にもできる仕事を見つけなくてはいけない。
 千春が情報誌を手に取った、その時。

「千春ちゃん!」

 声をかけられて振り返る。
 小学生の女の子がニコニコとして立っていた。
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