エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
『ですが先生もご存知の通りあの子は今まで人生のほとんどを病院ですごしてきましたからね。世間知らずです。並の二十五歳とはわけが違う。結婚なんかとてもとても……ましてや、日本でも五本の指に入る天才心臓外科医の八神先生とだなんて、冗談だとしか』

 そう言って引きつったような笑みを浮かべる芳人を、清司郎は冷たく睨んだ。

『それにしては昨日は見合いをさせるつもりだったようですが』

 鋭い清司郎の切り返しに、芳人がぐっと言葉に詰まる。
 ふたりの間に緊張が走った。
 芳人が清司郎を凝視してその意図を読み取ろうとしている。

『……八神先生』

 やがて口を開いた。

『先生のお怒りはごもっともです。退院早々、千春に見合いを、させようとしたことは謝罪いたします。先生のおかげで千春は命拾いしたというのに、それを無にするような行為でしたから。以後重々気をつけますので、どうか冷静にご判断下さい』

 丁寧な言葉を並べて、なんとか清司郎を懐柔しようとする芳人を清司郎は黙殺した。
 口先だけの謝罪と約束は不要だ。

『なんと言われましてももう決めたことですから。……ご報告は以上です』

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