エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
 声をかけられて振り向くと、白衣姿の清司郎が病院へ続く小道に立っていた。

「清君」

「感心感心」

 楽しげにそう言って清司郎は千春の方へやってくる。
 小夜が、「あ、そういえばやらなきゃいけないことがあるんだった」と呟いて家の方へ消えて行った。

「寒くないか。顔色はいいな」

 大きな手が優しく千春に触れて、千春の状態を確認する。もう何度も触れられたその手を千春はなぜか心地よく感じた。

「今日は、猫はいないみたい」

 千春が言うと清司郎がフッと笑って頷いた。

「見慣れない人間がいると今日は警戒しているんだろう。それでいい。だが油断は禁物だ。暖かくなるこれからは動きも活発になるからな。去年はなんと、子猫を産んで……」

「え、子猫?」

 思いがけない彼の言葉に千春は思わず声をあげる。清司郎が眉を上げた。

「あ、ううん。なんでもない」

 慌てて取り繕うが"子猫"という言葉が頭から離れなかった。
 そもそも千春の胸はこの庭に猫が来るという話自体にもどこか浮き立っている。
 入院ばかりだった千春は猫を触ったことがないからだ。
 できることなら追い払う前に少し抱いてみたいとすら思うくらいなのに……。
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