エリート心臓外科医の囲われ花嫁~今宵も独占愛で乱される~
「ダメです。どんな事情であれ、体調より優先させるべきことなどありません。少なくとも、今の状態の千春さんをこのままあなた方にお渡しすることはできません。このまま、私の病院に連れて帰ります」

 そして芳人に背を向けて、千春を抱き上げた。

「あ……」

 千春は小さく声をあげて清司郎にしがみつく。

「や、八神先生、し、しかし……!」

 慌てふためく叔父の声が、ホテルの廊下に響き渡った。
 これでいいとはとても思えない。
 とりあえず今は見合いを回避できたけれど、後で叔父にどんな目に遭わされるか。
 でも大きな腕の温もりに包まれて、どっと疲れを感じてしまい、千春はもう身体に力が入らなかった。
 千春にとっては少し走ったというだけでも、一日中登山をしたと同じなのだ。
 頭もぼんやりとして、なにも考えられなかった。

「千春、もう大丈夫だ」

 低い清司郎の声を聞いて、千春の記憶はそこで途切れた。
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