薄桜鬼*土千*
「……千鶴…?」
少し寝てしまっていたのか、待ち続けていた人が目の前にいるというのに、気づかなかった。
「……土方さん…」
「こんなところで何してんだ、風邪ひいたらどうする」
土方さんの手のひらが私の手を包み込む。
「……あったかいです。土方さんの手、鬼の副長なのに、こんなに手のひらは温かいんですね」
「んなこと言ってる場合か、こんなに手が冷えちまって…それに、いくら屯所の前とはいえ、女一人でこんなところにいたらあぶねえだろうが。しかも寝てやがるし…」
ブツブツと不満そうに言う土方さん。
心配してくれてるのかな…
「土方さんのお帰りを待ってたんです。その……は、はなま___」
花街と言いかけて、口を噤む。
プライベートな事をあからさまに聞いたら失礼だよね…
「…?なんだ?はなま__?」
「いえ……なんでもないです。夕餉の支度、できてますよ」
屯所の中に入り、皆がいる部屋へ向かう。
「ああー、いや、もう済ませてきたんだ」
「え、あ……そうでしたか。その……やはり、土方さんにはお慕いしている方がいらっしゃるんでしょうか…?」
「……は?」
思わず口をついて出てしまった言葉にハッとなる。
「…いえ、あの、」
部屋の前に着き、土方さんは襖を開けた。
ふと、手元を見れば、今まで見たことのない桃色の巾着のようなものが土方さんの手に握られている。
「千鶴…?茶、もらってもいいか?2つ」
「あっ、はい!すぐにお持ちします」
「ゆっくりでいい」
ゆっくりでいいと言ってたけど、外は冷えていたし、私は急いでお茶を用意して土方さんの部屋へ向かった。
「失礼いたします…」
「ああ……悪いな。お前も入れ」
「えっ、」
「こっちに来い」
部屋の入口で固まっている私を不思議そうに見つめる土方さん。
今まですっかり忘れてたけど、昼間、土方さんとしたことを思い出して、顔が熱くなる。
「………」
「慕ってる奴がどうとか言ってたな」
土方さんは手を伸ばすと、私の腕を優しく掴み、軽々と引き寄せた。
一瞬にして私の体は土方さんの腕の中に収まる。
「……土方さん……あの、慕ってる方がいるなら、こんな、私にこんなことをするのはやめてください」
「……あ?何言ってるんだ?」
「私……土方さんのことをお慕いして____」
その先の言葉は、発することが出来なかった。
土方さんに唇を塞がれていたからだ。
私を捕え、絶対に離さないとばかりに唇を合わせる。
「んぅ………ん」
土方さんは角度を変えて何度も私に口づけた。
ようやく唇が離れても、土方さんは指で私の顎をすくい、至近距離で見つめたままだ。
「いい加減、ちったあわかれ。俺が惚れてんのはお前だ、千鶴」
「………え……?」
私を片腕で抱き締めながら、土方さんは床に置いていた巾着を器用にあける。
中から出てきたのは、桜の花びらがついた簪だ。
「…千鶴、後ろ向け」
言う通りに後ろを向くと、首筋にチクリと痛みが走る。
「……土方さん……!?」
後ろから抱き締められる。
「……簪、つけてくださったんですか…」
「やっぱり似合うな…」
前に向き戻り、唇を重ねる。
土方さんが……私のことを…
「…ありがとうございます」
「…簪はもちろん似合うが、こっちの印もお前の白い肌によく似合ってる」
「…え?印?」