政治で呑め!宗教で喰え!!~政治的・宗教的グルメスポットガイド~
◎政治的飲み屋その4・かけこみ亭

 ソーシャルネットワーク「mixi」での知人(マイミク)が「かけこみ亭」という居酒屋をやっており、そこで原発問題に関するトークライヴが開かれるという事で、東京の同人誌即売会「グッドコミックシティ」があったついでに行ってみる事にした。

 2011年8月21日、南武線で谷保駅前へ。駅周辺は、東京としてはかなりこじんまりとした佇まいである。そのすぐ近くに「かけこみ亭」はある。家庭的な料理と酒を出す居酒屋である。トークライヴはかつて「だめ連」で一世を風靡した神長恒一が企画し、ゲストは雨宮処凛(作家)、円城寺あや(女優)、館野公一(シンガーソングライター)、ペペ長谷川(だめ連結成メンバー)と、ある意味非常に豪華で濃いメンバー。メンバーの中に、TVドラマ「GTO」「すてきにコモン!」等でも活躍している円城寺の姿を見て驚く。

 ジンジャーエールやウーロン茶等を飲みつつ、ゲストの話を聞く。円城寺は「非戦を選ぶ演劇人の会」会員であり、その関係で原発問題にも非常に強い関心を持っているとの事だった。聴衆である参加者もどんどん挙手・発言し、非常に熱気のある集会だった。

 集会終了後は神長の提案で引き続き車座集会となり、雑魚寝での宿泊も可能とのアナウンスも出た。自分はゲストに名刺と同人誌を配りながら自己紹介。そして、店を切り盛りするマイミクさんにも挨拶をすると、大変喜ばれて嬉しかった。

 硬派な集会以外にも、音楽等のライヴで盛り上がることも多いというこの店。機会があれば又是非訪れてみたい。

非戦を選ぶ演劇人の会
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◎右翼団体の直会に潜入!

 右翼団体が地元で集会をやるというのをネットサーフィンで発見し、早速潜入を決意。今回潜入するのは「一水会」(いっすいかい)。鈴木邦男(元産経新聞社員、元「全国学生自治体連絡協議会(全国学協)」代表、「生長の家学生連合」出身)や阿部勉(古書店主)、四宮正貴(「四宮政治文化研究所」代表)らにより設立。機関紙名は「レコンキスタ」。青年組織として「統一戦線義勇軍」があり、此方は見沢知廉(高橋哲央、作家)や木村三浩(元「日本青年社」社員)らが関わっていた。「一水会」は長らく鈴木が代表を務めていたが、現在は木村が書記長から代表に昇格し、鈴木は最高顧問を務めている。全国各地に支部を持ち(大半は公開されていない)、その地域支部主催で地方でも「一水会フォーラム」「レコンキスタ読者の会」等の名称で全国各地で後援会・学習会を開催している。

 「一水会」は、1960年代の「生長の家」などを中心とした宗教右翼系学生運動や、三島由紀夫(作家)らの右翼団体「楯の会」等の影響を受け、「ヤルタ・ポツダム(YP)体制打倒」という強固な反米国粋主義を唱える。一方、新左翼活動家と対話の姿勢を見せるなど柔軟な態度も取っており、その事から自民党支持者やネトウヨ等から「右翼の皮を被った左翼」と非難される事もある。

 2014年に開催された今回の集会は、鈴木顧問・木村代表の2大巨頭が講師として来るという事で、会場はほぼ満席、聴衆による熱気に包まれていた。客席を見ると、大行社や維新政党新風、維新の党など、既存の右翼団体・右派政党の活動家も多く来場していた。

 講演会では日本の右翼運動の振り返りから、イラクなど海外へ行った体験、フランス国民戦線など海外の右翼団体との交流、そして鈴木・木村の私生活に至る等、様々な事が語られた。そして、集会後は直会(「なおらい」、行事後の食事会の事で、本来は神道用語)が行なわれるとの事で、其方へも参加する事にした。

 1次会は立食パーティで、他の参加者と講演の感想を語り合う。流石に講師の鈴木や木村は人気が高く、対話を希望する多くの人に取り囲まれていた。他の参加者達と交流していると、事務局長の人から声を掛けられ、機関紙「レコンキスタ」見本紙を渡される。現代表の木村の猛々しいイメージとは対照的な、非常に穏やかな口調で話しかけられて驚いた。事務局長の周りにも人の輪が出来、色んな質問も飛び交う。

 2次会は一水会支援者の経営するバーで行なわれた。筆者は再び事務局長と同じ輪に入り交流を続ける。事務局長からは、「2月11日の建国記念の日には、国家としてきちんと行事をやるべきですよ。何せ国の誕生日なんですから。」「平和を希求するのは右も左も同じ。追求する手段は違うかもしれないが、戦争をしたいと思う人間なんていない。」等、熱の篭った言葉が次から次へと出てくる。他の参加者から事務局長に「一水会は左翼との対話もよくやりますが、あれを批判される事についてはどう思いますか?一水会自体を左翼呼ばわりする人もいますが…。」と質問が出る。それに対し事務局長は、眼光を鋭くして「大丈夫。右翼団体幹部の皆さんに対しては全て話をつけてあります。そして一水会を安易に左翼呼ばわりする様な浅い奴等は徹底的に締め上げると。ネットで騒いでるのは思想の無い軽薄な人間だけですよ。」と答える。口調は穏やかだが、答える時の眼光の鋭さには非常にビビッた。

 木村のいる輪にも少し入る事が出来た。指定暴力団・住吉会系の任侠右翼出身だけあって、地方の任侠団体事情にも非常に詳しかった。同じ輪には飛松五男(TVコメンテーター、元刑事、取調可視化反対論者)もいて驚いた。

 3次会もあったが、日も回っていたので残念ながらここで帰る事に。非常に濃い時間を過ごす事が出来た。機会があれば又是非潜入してみたい。

一水会
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◎貧困系飲食店・ココルーム&喫茶アース、+釜ヶ崎教会探訪

 大阪市西成区、日本屈指のホームレス街・釜ヶ崎(あいりん(愛隣)地区)と、昔ながらの風俗街である飛田新地の間に位置する山王・動物園駅前商店街。至道流星のライトノヴェル「大日本サムライガール」(星海社)に出てくる中卒公認会計士の中道左派アイドル、槙野栞の故郷の辺りと設定されている場所でもある。その近辺に、飲食店も経営し、ホームレス支援を目的とする団体と、そこから派生した、主にホームレスを相手に商売をする喫茶店がある。どちらも寄りたい店としてピックアップしてあったので、2014年「文学フリマ大阪」の翌日に寄る事になった。「大阪坊主バー」スタッフも強くプッシュしている店である。

 「ココルーム」は動物園前商店街の中にあるホームレス支援団体で、詩人の上田假奈代らにより設立。NPO法人として運営されている。芸術・人文・社会・自然等様々な分野での教育を無料で行なう「釜ヶ崎芸術大学」等を運営している。東京のリサイクル店主、松本哉が始めた「素人の乱」の大阪での拠点も此処に設けられている(尚、「素人の乱」は京都にもある)。同時に飲食店も開いており、日替わり定食やカレー、ドリンク等を提供している。11時頃行ってみるが、入口はシャッターが閉まっている。これは昼まで待つしかないかな…。動物園前商店街や飛田新地を縦横無尽にうろつき、見学がてらに時間を潰す。釜ヶ崎日雇労働組合(釜日労)事務所や、其処から分裂した釜ヶ崎地域合同労働組合事務所(大阪市議選等に度々出馬している稲垣浩の選挙事務所も兼ねる)、ホームレス・日雇労働者支援の各種団体事務所、新左翼系団体が立ててると思しき「釜ヶ崎の労働者は沖縄の基地建設にに反対する!」等の文字が躍る立て看板(後に革命的労働者協会(革労協)木元派が組織する「反戦・反失業を闘う釜ヶ崎労働者の会」の物と判明)、そして飛田新地の「料亭」(女性従業員による売春が行なわれていると言われる)等、様々な物を見て回る。

 町の中では、公明党のポスターが結構目立つ。それだけ創価学会信者が多く入り込んでいるという事か。又、ドヤ(ホームレス向けの安宿)の中には入口に「大阪維新の会」(当時)のポスターを大きく貼っている所もある。町の人の全てが社会的弱者に対して温かい目を向けている訳ではなく、こうして「貧困ビジネス」で食い物にしている人もいるということか。そして、地元のスーパーマーケット「スーパー玉出」の激安振りに驚愕する。

 12時に再訪。流石に開いていた。ホームページでは10時から開いてる筈なのだが…。まだ開いたばかりの雑然とした雰囲気の中、前日の売れ残りの同人誌をカウンターの隅に置き、カレーと紫蘇ジュースを注文。壁には「うたごえ新聞」(労働歌・反戦歌等を歌う歌声運動の団体「日本のうたごえ全国協議会」機関紙)が貼ってある。随分マニアックな物を貼ってるな~。カレーを食ってると、酒に酔っ払った日雇労働者に絡まれ、同人誌に落書きをされたり、破られたりとやや不快な思いをさせられる。店の人には「ネットで調べて、興味があって来てみた。昨日は同人誌即売会があり、自分は政治や宗教に関するルポ系同人誌を作って頒布した」と伝えた。

 カレーを食い終え紫蘇ジュースを飲んでいた辺りで上田代表が来店。和服の似合う美人だ。早速名詞と、破損や落書きの被害に遭っていない同人誌を渡し、筆者の引きこもり経験等も交えつつ会話する。好景気だった頃は、日雇労働者の子供でも大学に行ける程の稼ぎを得る事が出来ていた等、驚きの事実を知る事が出来た。「本の内容や此処に興味を持ってくれた事を見るに、社会学が専攻だったの?」と聞かれるが、「社会学どころか大学なんて物自体、アホのオイラにゃ夢のまた夢で…。釜ヶ崎芸大みたいなのが地元でもあれば受講してみたいんですけどね。」と発言。地元を聞かれたので話すと、「其処なら近くでココルームのスタッフ出身者がイヴェントスペースやってるよ!」との返答が。何たる偶然!地元に帰ったら、そのイヴェントスペースに早速行ってみる事を約束。続けて今から「喫茶アース」に寄ると告げると、「そこの店主もココルームのスタッフだったんだよ。」との返答。偶然に偶然が重なった事に驚きつつ店を出る。

 「ココルーム」を出た足で、「喫茶アース」へ向かう。動物園前商店街を出て、新今宮駅近くの大通り沿いにある。店に入ると、「子犬のように可愛い」とは程遠い、1960年代に流行ったヒッピー運動やスピリチュアル系・自己啓発系セミナーなどに傾倒しているような感じのニューエイジ系っぽい長髪と長い髭というむさ苦しい姿の若い男性が。「絵を見に来られたんですか?」とのいきなりの問いに面食らうが、どうやら2階のスペースで絵の展覧会を開催しているらしい。カレーで満腹になっていたので、茶を飲みたいと告げると、「麦茶なら無料」と言われて冷たい麦茶を数杯頂く。店主にはネットで調べて来たという事や、前日の同人誌即売会に参加した事等を告げ、同人誌を寄贈という形で渡した。店内では夕方から開かれる蛸焼きパーティの準備をする人や、公務員試験の勉強をする若い女性の姿等も。先程「ココルーム」で絡んできた酔っ払いの日雇労働者も追いかけてきたかのように来店してきて再び絡まれるが、今度は徹底無視する事に。本棚に目をやると、メイド喫茶について書かれた評論同人誌があるなど、中々面白そうな本が並んでいる。

 店主は西成在住だが、住民票は奈良県にあり、住民票を移転させた事は生まれて1度も無いという。そして選挙にも生まれてから1度も行った事が無く、「政治は誰がやっても同じ。関市長でも橋下市長でも、自分の生活は何も変わっていない。一生行かないし、行くべきでない。」と断言する。アナーキストか?と思いきや、「東京から出張ってきて市長選に出馬したマック赤坂(スマイル党総裁)は訳が分からない。あんなのは落ちるべくして落ちた」「日本に左翼は全く存在しない。日本の事を考えている左翼など日本には1つとして存在しない。この釜ヶ崎でもそう。彼らは反日、日本嫌いで外国が好きなんだから、選挙に出るなんて以ての外。全員日本から出て行って、自分の金で韓国かどっかの無人島を買って、そこで自給自足の生活をすべき」「原発に反対するのは左翼だから、電気を使うのを禁止すべき。電車も乗車拒否させれば良い」「心神喪失・心神耗弱の減刑も少年法も廃止すべき。年齢や病状に関係なく、微罪でも片っ端から捕まえて死刑にすれば良い」等、ホームレス・日雇労働者支援とは程遠い、在特会(在日特権を許さない市民の会)顔負けのネトウヨ的ヘイト発言が山盛り・特盛り・てんこ盛りで出てくる。此の人物が「ココルーム」を離れたのもこれが原因で、此の店もホームレス・日雇労働者を食い物にする「貧困ビジネス」系って事だな…。まあ弱者の溢れる町で公然と弱者叩きが出来るという点では、ある種の人間にとってはサンクチュアリ(聖域)かもしれんが。

 然し店主からは、伊那市議選に出馬した若い居酒屋店主のドキュメンタリー映画「イナかのせんきょ」についての情報を聞く事が出来た。とはいえ、店主は市議選の動向自体には全く興味が無く、「選挙などという『馬鹿騒ぎ』が、どれだけ自分を楽しませ、面白がらせてくれるか」だけしか考えてないという。何処迄利己主義で自己中心的で自分勝手で我侭で傍若無人なんだ…。此れだけ他人を自分の道具として利用する事以外何も考えてない者も珍しいのでは?結局無料の茶だけ頂き、非常に複雑な気分で退店する。「日替わり定食が美味しい」とは聞いたが、あのアナルコキャピタリズム(新自由主義を更に超越した無政府資本主義)とネトウヨ思考のヘイトスピーチ混ざったマシンガントークの鬱陶しさに耐えられるかどうか…。ま、ああいうのが大好きな人にとっては、まさにパラダイスなんだろうな。

 余談だが、「文フリ大阪」の当日(ココルーム&アースに寄る前日)には釜ヶ崎近辺のキリスト教施設も巡っている。先ずは新今宮駅近くの大阪救霊会館。「異言」という不思議な音の声を発する激しい祈りで有名なペンテコステ派のプロテスタント教会である。教会の壁には数多くのモニターが埋め込まれ、韓国系キリスト教会の日本語放送が繰り返し流されている。又、多くの教会の間でカルト・異端と見なされている「聖書配布協力会」による「死後裁きにあう」等のおどろおどろしい看板(通称「キリスト看板」)が壁一杯に多数貼り巡らされている。日曜朝5時から祈祷会をしているという事で行ってみたのだが、うっかり寝坊して10分程遅刻をして閉まった為、締め出されてしまった。中では激しい異言の祈りが大声で響いていた。

 続いて、今宮中学校隣の救世軍西成小隊。メソジスト系で軍隊組織を採るプロテスタント教会で、ホームレスへの炊き出しも頻繁に行なっている事で有名。朝8時から救霊会(早朝礼拝)が行なわれるとの事で行ってみた。狭い会堂の中に溢れんばかりの人で寿司詰め状態。入口には「聖別会(通常の礼拝)参加経験の無い者の入堂厳禁!」の看板が。せめて教会関係者と少しだけでも話がしたいと思い、会堂入口に近付く。すると、受付にいた軍服姿の役員に「聖別会に来た事の無い人間が入ってくるな!今すぐ出て行け!」と烈火の如く怒鳴られ、すかさず叩き出される。それでも何とか食い下がり、筆者がプロテスタント信徒である事や、救世軍とは一緒に地元でホームレス支援の炊き出しをした事もあり関わりがある事等を告げる。「五月蝿い。とっとと帰れ。」と冷たい声で再び追い返され、週報(礼拝のプログラムや報告等を書いた物)だけこっそりせしめて早々に立ち去る。地元の救世軍関係者は皆温和で大らかな人ばかりなのに、此方は本物の軍隊みたいに随分殺伐として殺気立ってるなぁ…。

 最後は「社会福祉法人聖フランシスコ会 ふるさとの家」。ホームレス支援の福祉施設だが、9時からミサがあるとの事で行ってみた。本田哲郎神父の説教はユーモアと慈愛に溢れ、聞いているだけで心が温かくなった。本当は最後までいたかったが、「文フリ大阪」の入場に間に合わなくなるので説教終了と同時に退場する。今度は最後まで参加してみたい。

 尚、「文学フリマ大阪」ではカルト観察本が特に人気で、一般参加されていた現役の御坊さんからも褒められて嬉しかった。


◎討論バーその1・ロフトプラスワン

 音楽系ライヴハウス・ロフトの系列のトークライヴ居酒屋、ロフトプラスワン。トークイヴェントを売りにした飲食店としては、恐らく日本で最も有名な店と言えよう。政治・社会関係だけではなく、御笑いやヲタク、エロ系等、様々なジャンルのイヴェントが催されている。

 2014年12月、コミックマーケット(コミケ、12月版は通称「冬コミ」)へのサークル参加後、知人のジャーナリストも参加するイヴェントがあるという事で行ってみる事にした。食事メニューも多いとの事なので、夕飯も此処で済ます事にした。

 事前に予約チケットを取っていなかったので、当日参加という事で列の後ろの方に誘導されて並ぶ事になる。座れるかどうか心配だったが、どうにか真ん中に近い、非常に良いポジションで座る事が出来た。会計は入店時に番号札を左手首に括り付け、注文時に番号札と照合し、退店時に入場料とともに一括で支払うというシステム。ライヴ中は御金のやり取りが無いので、面倒でなくて有難い。

 今回のテーマは「時事ネタプラスワン!」と称し、2014年の時事ネタを振り返るという趣向。この日のメンバーはプチ鹿島(芸人、コラムニスト)、久田将義(元「実話ナックルズ」編集長)、須田慎一郎(ジャーナリスト)、そして泡沫候補観察界隈で知らない人はいない畠山理仁(フリージャーナリスト)と、非常に濃い面々。泡沫ウォッチャーとしては、畠山の政治ネタを聞き逃す訳にはいかない。

 着席と同時に飲み物と丼料理、おかず代わりのおつまみを注文し、話に聞き入る。濃い面子による門外不出の濃い時事ネタには、只々圧巻されるばかりであった。

 終盤では客席側も挙手による発言が可能となった。客も発言し、イヴェントを盛り上げるのがこの店の売りの1つである。どうしても2014年の選挙ネタを詳しく聞きたくて、必死で手を上げ、選挙ウォッチャーでもある畠山に質問する。すると、2代目中村喜四郎(出生名・中村伸)陣営の、恐ろしい結束力を持った選挙戦の話を聞く事が出来た。喜四郎の息子、中村勇人も「息子」の襷をかけて選挙戦に参加したという。2代目が引退する日が来たら、彼が3代目中村喜四郎となるのだろうか…。ライヴ終了後、厚かましくも楽屋に押しかけ、出演メンバーに同人誌を渡してしまった。

 尚、都内には同じくロフト系列のネイキッドロフト(新宿)、ロフトA(杉並区阿佐ヶ谷)、ロフトから独立したパンディット(杉並区高円寺)、他にはライヴワイヤー・ビリビリ酒場(新宿)、カフェ・ラヴァンデリア(新宿)、ゲンロンカフェ(西五反田)等がある。少し趣旨とは異なるが、宿泊も出来るイヴェントスペース「りべるたん」(東池袋)という所もある。ネイキッドロフト(その時はカルト教団対策関係のトークライヴがあった)とラヴァンデリア(フリーター労組らによる「生存メーデー」の打ち上げ)以外はまだ入った事が無いので、是非いつか全て巡ってみたい。


◎討論バーその2・アワーズルーム

 関西ローカルのラジオ番組「誠のサイキック青年団」(ABC・朝日放送ラジオ)で、北野誠と「ゲストーク」とも称される妄想含みで下ネタまみれの下世話な会話を見事なテンポで展開していた作家、竹内義和。ラジオ番組は非常に不可解な形で打ち切られたが、その後北野は謹慎を経て地方ラジオ局を中心に芸能活動を再開。そして竹内は、自ら設立したイヴェントスペース「アワーズルーム」を拠点に活動を続けている。筆者も「サイキックミーティング」(サイキック青年団リスナー対象のトークイヴェント)に参加経験がある程のサイキッカー(サイキック青年団リスナー)であり、竹内の話を是非直接聞いてみたいと思い、「文学フリマ大阪」の前日に行ってみる事にした。

 大阪市西区江戸堀、飲み屋が立ち並ぶ路地裏の少し分かり難い場所に「アワーズルーム」はある。こじんまりとしたスペースだ。この日はサイキッカーの間では超有名葉書職人である縛り屋トーマスと竹内による、アイドルに関するトークライヴであった。聴衆は自分を含め数名。聴衆は飲み物を頼んで飲みながらトークを聞く事が出来る。スタッフに注文を聞かれ、マンゴージュースを飲む事に。

 トーク内容は主にアイドルの噂話や、グラビア写真を見ながらの妄想。ラジオも上回る程の破壊力抜群の「ゲストーク」が展開される。時に、筆者を含む聴衆も混ざって展開される恐ろしい程の「ゲストーク」は、とても外で公に出来るものではない。「トークイヴェントで見聞きした情報は門外不出、絶対外に漏らしてはならない。録音・録画絶対厳禁」は竹内の絡むイヴェントでは絶対厳守のルールである。トーク内容のゲスぶりを知りたければ、是非直接足を運んでみてほしい。

 尚、トーマスには直接、竹内にはスタッフの方を通じて「サイキック青年団」放送時からのファンである事を告げ、同人誌を渡した。後日、メールで「面白かった」と感想を頂き、非常に嬉しかった。

 大阪には似たような場所として、「討論Barシチズン」「ロフトプラスワン・ウェスト」等がある。


◎宗教的飲み屋その1・エポペ

 現役のカトリック神父が、新宿歌舞伎町でバーを開いてバーテンをやっている!?堅苦しいイメージの強かったカトリックの神父がそんな事をするなど、当初は全く信じられなかった。しかし、そこは確実に存在した。

 店名は「エポペ」。「美しい冒険」という意味との事である。ジョルジュ・ネランという、フランスから来日した元職業軍人で文学・神学研究者でもある神父が、「日本人は飲んで酔わないと、中々本音を出せない」と感じ、1980年に開いた店との事である。筆者が来店した2007年には、ネラン神父が高齢により店に立つ事が困難になってきた事もあり、近藤雅広神父がカウンターに立っていた。

 訪れた時間は夜11時頃。最初にノンアルコールの飲み物でオススメを聞き、辛口のジンジャーエールを勧められて飲む。そして特に注文をしていなくても、ガンガンつまみが出てくる。しかもカルパッチョやローストビーフなど、結構手の込んだ料理だ。料金が明示されてないので、ヒヤヒヤしながら飲食する。

 「お酒は飲まれないのですか?」と神父に聞かれたので、「いやぁ、全くの下戸で…。実はプロテスタント教会に所属してるのですが、牧師が結構禁酒に熱心な人という事もあって。まあ、下戸な御蔭で禁酒運動は自分にとっては全く苦痛じゃないんですけど。」と話す。すかさず隣で飲んでた客が、「プロテスタントですかぁ~!自分はプロテスタントではとても厳し過ぎる感じがして、大らかなカトリックじゃないと信仰が守れない、非常に弱い人間なんですよぉ~。」と合いの手を入れてくる。他の客とも気さくに話が出来る。雰囲気は非常に良い。その後も神父や客を交えて、信仰の話で楽しく盛り上がる。

 近藤神父からは、「実はプロテスタントでも特に飲酒に厳しいホーリネス系の教会の牧師さん達も結構御忍びで来られて、そういう方は大概『ストレスが激しくて苦しい』と言われながら、酔い潰れるまで飲まれるんですよねぇ…。プロテスタントの皆さんも、自身を厳しく縛らず素直になれば良いと思うのですが…。」と、筆者が抱いていた「堅苦しい」というカトリックのイメージを根底から覆す言葉が次々と出てきて、只管驚き続ける。

 店には教派を問わずクリスチャンは勿論、遠藤周作らも愛していたという事もあり、クリスチャン作家のファンも多く訪れるという。文壇バーの一面も持っているという事か。

 終電を理由に、1時間程で会計をする事になる。ジンジャーエール1杯と料理2品で合計2千円。歌舞伎町にしては手頃なところか。然し料金が明示されてないので、非常にドキドキした。初来店という事で、ネラン神父の著書「おバカさんの自叙伝半分―聖書片手にニッポン40年間」(講談社文庫)とドリンク1杯無料券をプレゼントされ、店の入口を出たエレヴェーターまで見送ってもらい、非常に気持ち良く飲む事が出来た。

 残念ながら2011年3月にネラン神父は亡くなり、店自体も同年10月に閉店してしまったが、1994年に結成された国際支援NGO(2002年からはNPO法人)のヒューメイン・インターナショナル・ネットワーク(HINT)が意志を引き継ぎ、毎月最終土曜日に「エポペの集い」が定期的に開かれている。機会があれば「集い」も是非覗いてみたい。


◎宗教的飲み屋その2・中野坊主バー

 現役の僧侶がバーテンダーを務める「坊主バー」。大阪で始まり、東京では四谷に進出していた「坊主バー」が、中野区にもオープンしたと聞き、早速行ってみる事にした。

 2011年8月、「グッドコミックシティ」の前日、泡沫候補&カルト教団ウォッチャーを中心とするオフ会の会場として使用。マスターは各宗派の現役の僧侶の方が持ち回りで務めており、この日のマスターは真宗大谷派の方だった。低音の声が非常にダンディー。店内は御香の香りが非常に心地良い。

 「色即是空」「無間地獄」など、仏教にまつわるオリジナルカクテルもあるなど、店の独特の雰囲気はそれだけでも話のネタとして大いに盛り上がる。そんな店の雰囲気とも相まって、非常に楽しいオフ会となった。

 帰り際に自分達の素性を明かし、同人誌を寄贈すると、「うちの店は、宗教と政治の話は大歓迎なんですよ。」と素敵な笑顔とダンディーな声で返してくれた。次回行く時は、是非カウンターで飲み、説法を聞いてみたい。

 更に、後に杉並区高円寺には尼僧がバーテンを務める「尼僧バー」が開店し、四谷の「坊主バー」と同じ建物と新宿ゴールデン街にはプロテスタント教会の牧師がバーテンを務める「牧師バー」が開店した。更に、代官山には「寺カフェ代官山」も開店している。此れ等にも是非寄ってみたい。

 尚、即売会の方は自身のスペース設営中に原因不明の失神で倒れ、そのまま救急車で聖路加(せいルカ)国際病院に搬送され、全く参加する事無く終わってしまった。クリスチャンの間では、いやそれ以外でも超有名で、憧れの場所でもある聖路加病院にこんな形で担ぎ込まれて御世話になるとは、何とも皮肉なものである。


◎宗教的飲み屋その3・大阪坊主バー

 2014年、文章系オンリー同人誌即売会「文学フリマ大阪」に参加する為に大阪へやってきた。日本最大級のホームレス街・ドヤ(安宿)街でもある西成区の新今宮駅前の安宿に泊まり、堺市で即売会に参加。即売会及び公式懇親会が終わった後、天六(天神橋筋6丁目)近く、本庄東にある坊主バー大阪へ。此処も東京にある所と同じく、現役の僧侶がバーテンダーを務めるバーである。実は、坊主バーは大阪が発祥であり、一時閉店していたが、場所を変えて復活したのがこの店である。

 今日のマスターは真宗大谷派(通称・東本願寺)の方。筆者が来店した午後9時頃は、丁度説法が終わった直後のようだった。ジンジャーエールを頼み、マスターや他の客に説法の感想を聞いたりして盛り上がる。「色即是空」など、仏教にまつわるオリジナルカクテルも多数ある。まあ「般若湯」(僧侶の間での酒の呼び方)という言葉もあるしなぁ。

 隣に居合わせた御客さんは学生さん。「いやぁ、自分が通ってるのは所詮Fランク大学で…。」と自らを低学歴と強調するが、出てきた大学名は関西の超難関国立大学の1つ。おい!其処がFランだったら筆者含めて日本の圧倒的多数はFランじゃわい!激しい嫉妬と羨望が頭をよぎり、思わずツッコミを入れてしまう。彼らも実はガチヲタで、高校生時代にコミックマーケット(東京で開かれる、日本最大の同人誌即売会)に行った事があるという。同人誌をプレゼントすると、大層喜んでくれた。

 丁度宗教ネタを扱った同人誌(カルト教団潜入体験本「信じる人々」)も持ってきていたので、マスターとスタッフの人にも寄贈して目を通してもらうと、マスターからは「ホンマ『こいつは悪い奴等』っていうのばかり、よう集めたな~。真宗大谷派の人間としては、浄土真宗親鸞会(浄土真宗本願寺派から分裂したカルト)をはっきりカルトとして取り上げているのが非常にええと思うわ。」と御褒めの言葉を頂いた。ヴォランティアスタッフと思しき女性(普段は会社員)からは「自分はミッション系学校の出身だから、キリスト教系にも非常に興味があるので面白い。」とこれまた御褒めの言葉を頂き、非常に嬉しかった。

 ところが、酒も入って気が大きくなっていたのか、マスターの真宗大谷派自慢とキリスト教批判が始まる。

「日本の宗教の中で最もカルトから縁遠いのは御東さん、真宗大谷派や。それに比べてキリスト教なんてのは、全知全能の唯一神とか、死んだ人間が3日目に復活するとか、人間の頭では理解出来ひん荒唐無稽な宗教や。せやからカルトなんや。」

 筆者もすかさず、

「人間如きの頭で理解出来るような小さい考えなら、最早宗教と呼ぶに値せず、そんな物に救いなどあり得ない。それに真宗大谷派は天皇・皇族と密接に絡み、大谷家を個人崇拝して本願寺派から分裂するなど、カルト性は十分高い。第一、僧侶を養成してる大谷大学をはじめ、真宗大谷派が絡んでいる学校は全てFランクのアホ学校しか無くて、それが大谷派がまともに人を育てられる能力が全く無いという確たる証拠ではないか。せめてキリスト教学専攻のある京都大学・同志社大学・上智大学・国際基督教大学等を抜いてからでないと、大谷派が優れているという事に全く説得力が無い。」

等、色々言いたいところをグッと堪え、「まあ、真宗の『悪人正機』は、キリスト教の『罪人でもキリストを信じれば救われる』に似てると思ってるので、キリスト教徒の側はむしろ真宗の皆さんには東西(東本願寺の大谷派と西本願寺の本願寺派)問わず非常に親しみを覚えてますけどね…。」と大人の対応でかわす。

 終電に乗る為0時頃に退店。帰り際に女性スタッフの方から「こんな本書いてて、こんな店に来るって事は、もしかしてソーシャル(社会的)な感じの御店が好きなんじゃない?それなら西成の『喫茶アース』に行って御覧なさいよ!子犬みたいな可愛いマスターが、美味しいランチ作ってくれるのよ!」と、他の店を紹介される。たまたま自分が翌日寄ろうと思っていた店だ。「其処はもう行きたいと思ってたので是非!」と告げて、店を去った。その「アース」では色々面食らう体験をするのだが、その時の話は別項で詳述している。

 東京に比べて論争好きな人が多そうな雰囲気なので、徹底的に語りたい人には非常にオススメかも!?尚、関西の坊主バーは京都府にもあるので、そちらにも機会を作って是非行ってみたい。
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