再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

嵐の後に残ったもの

病院の特別室はいつ誰が入ってきてもおかしくない場所。
当然鍵もかかってないし、いきなりドアを開けられても文句を言うこともできない。
そんな場所で、私は抱きしめられていた。

「ねえ、恥ずかしいから」

もし誰か入ってきたら言い訳なんてできないもの。

「ダメ。お仕置だから」
「はあ?」

思わず口を開けて新太を見上げた。
私、お仕置されるような事したっけ?

「無自覚は最もたちが悪い」
「いや、でも」
本当に覚えがない。

「杉原先生にも、塙くんにも、気安く触らせすぎだろ?」
いかにも不機嫌そうに言う新太だけれど、
「触られてなんて」
「触られてた。肩や、頭や、塙くんなんて環を抱きしめていたじゃないか」
「それは、」
その時の状況ってものがある訳で・・・

「環は俺のだ」

子供みたいな口調で言われ、ギュッと抱きしめられて、私も新太の背中に手を回した。
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