再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「敬、驚かさないでよ」
いきなり声をかけるからびっくりするじゃない。

「遅いお昼だな」

既にお昼を食べ終えたらしい敬はコーヒーを手に私の横へと座った。

「救急も今日は忙しいんでしょ」
確か救急からも呼び出されているって聞いた。

「消化器科ほどじゃないさ。部長もいないのに病棟で急変が続出して大変らしいな」
「らしいわね」

私は外来にいたから知らないけれど、今日はお休みの届けを出している先生が何人かいたからきっと忙しかったはず。

「まぁ、救急は皆川先生が来てくれたから大丈夫だったけれどさ」

ドクン。
また、皆川先生。
名前を聞くたびに1人ドキドキしている私はなんてバカなんだろう。

「お前、もう会った?」
「うぅん、まだ」

会いたいような会いたくないような、複雑な気持ち。

「あったらびっくりするぞ」
「何で?」
「消化器科の医者になるために生まれてきたような人だからな。どんなに難しいカメラでも皆川先生にかかると簡単に見える。本当に神業だ」

神業ね。
そういえば、私の知っているあの人もカメラの腕がピカイチだった。
今まで学生時代も含めてあの人以上に完璧な技術を見た事は無い。
研修医になりたての頃、目の前の目標があまりにも大きすぎてやってもやっても足元にも及ばない自分に1人で焦っていたっけ。
周りのみんなは凄腕の指導医に恵まれたって羨ましがったけれど、私にはそれが辛かった。
今思えば懐かしいな。
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