再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

思い出したくない自分

「では、薬を出しますので月曜日に外来を受診してください」
「はい。ありがとうございます」

診察に来ていた老人が頭を下げて診察室を出て行く。

ホッ。
これで何人目だろう。
高度救命救急センターとは言うものの、患者さんのほとんどは軽症者。
診察して、検査をして、薬を出す。やることは外来と何ら変わらない。
もちろん緊急で搬送されてくる患者もいる訳で気を抜くことはできないけれど、私は救命が嫌いじゃない。

「お、元気そうだな」
そう言って私の顔を覗き込む敬。

「もう、近いって」

必要以上に至近距離まで顔を寄せられ手で避けた。

「二日酔いじゃないかって心配していたんだが、大丈夫そうだな」
「おかげさまで」

さすがに皆川先生の隣で二日酔いするまで飲めるほど強靭な神経はしてないし、むしろ昨日なかなか寝付けなかったせいでかなり寝不足気味。

「張り切りすぎて倒れるなよ」
「うん、大丈夫」
敬の足を引っ張るようなことはしない

敬は今日の救命外来のリーダー。
スタッフの動きを見ながら的確に指示を出していく敬を中心に、救急外来が回っている。

「救急車が入ります」
遠くの方から声が聞こえた。

さあ、また新しい患者さんだ。
ちょうど手が空いていた私も救急車の搬入口へと向かった。
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