再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
私に処分が下らないように、皆川先生はすべての責任を自分一人でかぶって病院を去った。
一応依願退職の形にはなっていたけれど責任を取る形で辞めていったことは誰の目にも明らかで、消化器科内のスタッフと管理職以上の職員は皆そのことを知っている。
それからの日々は、私にとって本当に地獄だった。
人の視線がこんなに痛いと初めて知ったし、いつも誰かに陰口を言われている気がしてピリピリしていた。
そう言えば、このころから私は笑わなくなった。

「よく踏ん張ったな」

え?

「お前の性格なら全てを公にして医者を辞めてもおかしくないのに、よくそこで頑張ったな」
「敬」

確かに、私は頑張った。
本当は逃げ出したかったけれど、「これだけ病院に迷惑をかけて、逃げるの?」「皆川先生の努力を無駄にする気?」と、2年目の指導医になってくれた先生に責めるように言われ逃げ出すこともできなかった。
今逃げ出せば、皆川先生の思いが無駄になる。そう思ったから、私は頑張るしかなかった。
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