外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「はい、もしもし?」
『美鈴? 良かった、出たわね』
「何、どうしたの? そんな時間に」
モルディブの現地時刻は午後六時過ぎ。日本とは四時間ほどの時差があるから、向こうは午後十時を回ったところだ。
『モルディブはどう? 仕事は順調なの?』
「え? まぁ、順調だけど」
普段、母は十時を過ぎればベッドに入ってしまうことが多い。これまでそんな時間にわざわざ電話をしてくることなんてなかったのに。
まさか。嫌な予感が頭をよぎる。
『来週頭には帰国してるのよね?』
「うん。それが何?」
『言ったでしょ? お見合いの話。葉子さんがね、いい話があるからって』
嫌な予感は見事に的中。
葉子さんとは父の姉で、私にとって伯母にあたる人だ。
両親よりもはるか前から私の結婚について気にかけていて、親戚で集まる機会があれば『美鈴、結婚は?』と訊かれていた。
そんな葉子伯母さんに両親が私の結婚について持ち掛ければ、喜んでお見合いの席を用意してくるだろう。
葉子伯母さんの夫である私の伯父にあたる人は代議士で、葉子伯母さんはいい見合い相手を探してくると意気込んでいるらしい。