過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
「このタイミングでフランスの視察が入ったのは、幸運だったよ」

デザートが運ばれてきたところで、にこやかな笑みを浮かべながら拓斗が言う。
どういう意味なのかと視線で伺う私に、彼はまるでとろけるような笑みを向けてきた。

「美香に会えたからだよ」
「なっ」

思わずドキリとしてしまった。そんな顔をして甘い声で言われたら、愛の告白をされているわけでもないのに勘違いしそうになってしまう。
気恥ずかしさに耐えられず思わず視線をそらした。


その後、時間通りにオフィスまで戻ってきたとき、扉に手をかける寸前の私の腕を拓斗が掴んで引き寄せた。何が起こっているのかわからず、されるままになってしまう。
気づいたときには、彼の胸元に抱き寄せられていた。

「美香はきっと、俺の元に来る」

それは予言だろうか。それとも洗脳だろうか。
優しい声音で耳元で囁くと、そっと私を解放して自ら開けた扉の内側へ私を押した。

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