呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 エオノラが眉間に皺を寄せて唇を噛みしめていると、クリスが人差し指でつついてきて、フッと笑った。
「そんな顔するな。別に不幸自慢している訳じゃない。私が言いたいのは何かが駄目になったからといって、人生が終わるわけじゃないってことだ。生きていれば必ず悪いことはある。だが、同時に良いことだってあるし、希望もある」
 要は捉え方を少し変えてみろということなのだろう。
「つまり、だ。私は呪われて幼馴染みを失ってしまったが、呪いのお陰で苦手な社交界で令嬢たちの相手をしなくてよくなった。うっかり足を踏んづけて頬を引っぱたかれなくて済むんだからそれに関しては感謝している」
 柄にもなく冗談を言うので、エオノラはプッと吹きだした。

「真剣に話を聞いていたのに……」
「私は至って真剣だ。エオノラも、そうやって多方面から物事を考えてみると良い。何か見つかるかもしれない」
 クリスの言うとおり、これで人生が終わってしまうわけではない。
 今までの自分はすべて完璧な状態を求めすぎていた。完璧じゃないと駄目だと思い込んでしまっていた。
「私ったら、零か百かで物事を考え過ぎていたんですね」
「これからのあなたは新しい選択ができる。選択肢だって増える」
 クリスは壁際に移動すると窓を開けた。

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