呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「……お願いです。もう、やめてください。クリス様が傷つく姿は見たくありません」
「ありがとう。エオノラの気持ちは受け取っておく。ハリーに呪いについての話をされたと思うが、これは首を突っ込んで良い内容じゃない。そもそもあなたとの関係は夏終わりまで。それが終わればお互いまた別の世界を生きることになるんだから」
 それはエオノラを拒絶するような物言いだった。もともと期限付きの関係であることは理解しているが、それでもクリスに寄り添えるよう努力してきたつもりだ。しかし、彼自身は期限付きの関係だからと割り切っている。
 とてつもなく切ない気持ちがエオノラの心を埋め尽くしていく。

 エオノラがクリスから離れて俯いていると、彼が優しく肩を叩いてきた。
「だが一つ、あなたにお願いがある」
「お願いですか? 私ができることなら、何でも仰ってください!」
 初めてのクリスからのお願いにエオノラは意気込んだ。彼のために何かできるのなら嬉しいことはない。

「舞踏会が終わってから、暫くこの屋敷には来ないでくれ」
 突然の申し出に、エオノラは一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「どうして、ですか?」
「頼む。あなたに別に来られるのが嫌だとかそんなんじゃない。少し一人になりたいんだ……」
 穏やかに微笑むその顔の下で寂寥を抱いている気がして、エオノラはそれ以上クリスを追及することができなかった。

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