呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 クリスは目を細めると、やがて口を開いた。
「さっき、エオノラが私への想いを告白してくれた時だけど、あんな状況下でなければ嬉しくてきっと舞い上がっただろうな」
 そう言ってクリスはエオノラを抱き寄せると、頬に口づけをする。
 柔らかな唇が触れた瞬間、頬がカッと熱くなるのが嫌でも分かった。恥ずかしくなってエオノラは俯いてしまう。
「俯かないで。もっとあなたの顔が見たい」
 低い声で囁かれ心臓が大きく跳ねる。親指が顔を上げるようという風に顎を撫でてくる。その優しい指使いに応えるように、エオノラはおもむろに顔を上げた。
 ふと、エオノラはクリスの変化に思わず声を上げる。

「クリス様の瞳の色が!」
 琥珀色の瞳が徐々に青みが強くなって変化していく。
 当の本人は驚く素振りもなく、平然としている。
「呪いで瞳の色が変化していたから。これで完全に解けたってことじゃないか?」
 瞳の色の変化はまだ続く。徐々に深みを増した瞳の色は漸くそこで落ち着いた。
 それは宮廷舞踏会で出会った青年と、まったく同じ緑色をしている。

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