呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 近頃は仕事が落ち着いて早く帰ってくる日が多くなった。とはいえ、これまでシュリアと過ごせなかった時間の埋め合わせをするため、屋敷に戻ってもすぐに出かけていくのであまり会話らしい会話をする暇はなかったが。
「……そういえば、今日の新聞に魔術院の法律が改正されたって記事が載っていたんだけど、ずっと忙しかったのは改正手続きに奔走していたからなんでしょう?」
 それまでのゼレクはどんなに忙しくても必ず休みには帰ってきてくれた。それにも拘らず、ほとんど屋敷に帰ってこなくなったのはこの改正法案を是が非でも成立させるために尽力していたからだろう。

「さあて、なんのことかなあ」
「もうっ、惚けないで」
「俺はいろんな法律の整備をするのが仕事だからね」
 宰相補佐という立場上、私情を挟んでいたとは口が裂けても言えないはず。そう思ってわざわざ二人きりになったのに、結局ゼレクには最後まで白を切られてしまった。

(お礼を言いたかったのに、あくまでも宰相補佐の仕事だと言い張るのね)
 肩をすぼめているとエオノラの前に手が差し出される。
「ほら、そろそろ急がないと時間に遅れてしまうよ」
「……そうね。出発しましょう」
 エオノラはゼレクにエスコートされて馬車に乗り込み、王宮へと出発した。

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