呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~

「それでね、本題に入らせてもらうけど、あなたはいつフェリクス様を私に紹介してくれるの? いいえ、もう少し分かりやすく言うわね。いつ、フェリクス様を私に譲ってくれるのかしら?」
 無邪気な様子で尋ねてくるアリアにエオノラは背筋が凍った。
「な、何を言っているの? 譲るってどういうこと? 彼はものじゃないわ」
「まあエオノラったら……今さら何を惚けるの? エオノラはいつだって私のために()()()()を見つけたら譲ってくれたじゃない。リックだってそう。婚約していたけど私に譲ってくれた。今回だって私のためにフェリクス様を見つけてきてくれたんでしょう?」
「……は?」
 アリアの常軌を逸した発言にはついていけない。


 エオノラは小さい頃のアリアを振り返る。昔のアリアはエオノラのものを何でも欲しがる子供だった。いつも駄々をこねて、エオノラのお気に入りであるぬいぐるみや人形が欲しいと強請り、思い通りにならないと癇癪を起こしていた。
 エオノラはアリアが癇癪を起こすのは両親がいなくて寂しいからだと思っていた。だから気に入っているぬいぐるみや人形をアリアが寂しくなくなるようにと願って譲っていた。

 成長するに連れてアリアの癇癪はなくなった。とはいえ、アリアが自分の持ち物を物欲しそうに見ることがあるのを知っていたので、エオノラは彼女にレースのリボンをプレゼントしたり、可愛らしい髪留めをプレゼントしていたりしていた。
(……今までの好意が全部裏目に出てしまったの? 私が持っているものはなんでも良く見えるようになってしまったってこと?)

 年頃になってからのアリアはエオノラからのプレゼントだけでは満足しなくなった。次に欲しくなったのが当時エオノラが婚約していた相手、リックだ。
 呆然としていると痺れを切らしたアリアが声を上げた。

「さあエオノラ、もたもたしないで私をフェリクス様に紹介して! 大丈夫、リックの時みたいに上手く虜にしてみせるから」
 恐怖を覚えたエオノラはアリアから数歩離れると首を横に振った。

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