呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~

第42話



 季節は初夏へと移り、死神屋敷ことバラ屋敷の庭園では見頃を迎えたバラの花が赤色やピンク色、白色とそこここに咲いて新緑に彩りを添えている。
 お茶の準備を済ませたエオノラはティーセットを銀盆に載せてガーデンハウスから四阿へと歩いていた。

 祝いの宴以降、リックとアリアの関係はギクシャクしている。
 お互いが自分優先で動いていたので仕方がないが、アリアがフェリクスに言い寄ったことにリックは酷くショックを受けた。それに加えて、田舎領へ向かったはずなのに無断で王都に戻ってエオノラに詰め寄ったこと伯爵にバレてしまい、彼は当初予定していた田舎領よりもさらに王都から遠い田舎領へと飛ばされることになった。向こう一年は帰ってくるなと言われているらしい。

 一方のアリアはというと、生まれて初めてホルスト男爵から酷く叱られて驚いていた。しかし、自分の何が悪くて男爵に叱られたのかいまいち分かっていないらしい。本人曰く、自分はリックを捨ててフェリクスに乗り換えようとしただけだと言うのだ。
 それが問題だというのに彼女にはことの重大さが見えていない。
 お陰でアリアの社交界での評判はどん底までに下がっているが、本人はそれについてもあまり理解できていない。要するに、彼女は自由奔放すぎる性格だったのだ。
 とはいえ、自分の行動に責任を持たない振る舞いは今後も彼女自身の首を絞めることになるだろう。その証拠にリックとの婚約解消は時間の問題だと社交界では囁かれている。

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