呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~

第8話



「いい加減にしろ。あんたみたいなお嬢様がいて良い場所じゃないんだよここは!!」
「きゃあっ!!」
 無理矢理腕を引っ張られた拍子にエオノラはバランスを崩してしまった。
 その時、クリスが手首にはめているもの――銀の腕輪がキラリと光った。
 銀細工の装飾が美しく、真ん中には古代の植物が入った琥珀が埋め込まれている。それがエオノラの腕に当たった途端、弦を爪弾くような音が聞こえてきた。


 ――お願い、彼を救うためにあなたの力を貸して。


「……っ!!」
 石は、エオノラが触れて意識を集中し、語りかけることで初めて言葉を返してくれる。意識を集中せず、語りかけてもいない状態で石が言葉を発するのは稀で、それに気づくまで少しだけ時間が掛かった。
(力を貸す? それに彼を救うためって何から救うの?)
 疑問が頭を過ったところで、気づけば身体が前へと傾いていた。エオノラは慌てて体勢を立て直そうと近くの木の枝に掴まろうとするが、叶わなかった。

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