【電子書籍・コミックス配信中】呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「パトリック様、エオノラのことをそんな風に言わないでください。確かにうちは男爵家で家格は下です。でも、エオノラはあなたが言うような意地悪な人じゃないです!」
「君は優しいね、アリア。エオノラもこれくらい優しくて思いやりがあればいいのに」
 アリアが柳眉を逆立てて抗議するとリックは甘やかな表情をする。
 初めて見るその表情から、リックがアリアに心酔していることは明白だった。
 無意識のうちにぎゅっとペンダントの柘榴石を握り締めていると、リックがこちらを一瞥する。それはものでも見るような冷たい視線だった。

「エオノラ、君との婚約は破棄させてもらう。それと俺から言えるアドバイスは、少しはアリアを見習えってことだな。彼女はとても気が利くんだ。疲れていると優しい言葉をかけてくれるし、行動を共にしてくれる。俺のためにわざわざ美味しいお茶の茶葉や蜂蜜を届けてくれるんだ。でも君はどうだった? 君は俺が言わないと差し入れも持ってこなかったし、いつだって俺の誘いを頑なに断ってうちの応接室で話すだけだったよね?」
 それは違うと、エオノラは心の中で首を横に振る。

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