呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「ハリーはこの国の第二王子で、医学や薬学などの学術的な分野で活躍している。学者からの信頼も厚いし、以前よりも多忙だ。だから俺の世話を任せられる誰かを探していた」
 そんな折、様子を見に来たハリーの従者が軽食を届けに来ていたエオノラの存在に気づいたのだろう。一番初めに紙袋を受け取らなければこんなことにはならなかったと、今更ながら後悔してしまう。

 自分の中で人との交流に飢えていたのは事実だ。だから冷たい態度を露骨に取りながらも、最後まで突き放しきれなかった。
「この選択は間違っている。エオノラ嬢が何を考えているのか分からないし、このままいけば私に待っているのは破滅だけ。万が一彼女が悪事を企てているにしても私の運命が彼女を巻き込み、傷つけるなんてあってはならない」
 エオノラの意図は図りかねるが、これまで通りぞんざいに扱えばいいだけの話だ。
 握っている拳が震えるのを感じたクリスは、さらに力を込めた。

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