呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 嗚呼やっぱり、と彼を見ながらエオノラは思った。
(侯爵様はぶっきらぼうで冷たい態度を取る人だけど、心根は優しい。呪いのせいで傷つけられるのが怖くて、わざと他人を突き放すような言葉を選んでいる)
 だが、ずっと独りがいい人なんていない。

 家族も使用人すらいないこの寂しい屋敷で、身体から魂が解放されるその時まで一生を過ごす。呪われてしまったばかりに他人に化け物だと罵られ、顔を一目見れば死んでしまうと恐れられる。
 たとえそれがクリスの役割で運命なのだとしても、寄り添ってくれる誰かがいてくれるだけで、心のありようも随分変わってくるはずだ。
 石の声が自分にしか聞こえないのと同じように、孤独なクリスの話し相手になれるのは、きっと自分しかいない。

(私しか、彼の本当の姿を見える人間はいないから……)
 エオノラは拳を強く握り締めた。
 過酷な運命を背負う、彼の支えになろう。少しでもその重荷が軽く感じられるように。
 エオノラは目を伏せるとそう決心したのだった。

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