呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 疑問符を浮かべていると、ハリーが続けた。
「ルビーローズを心の拠り所とする理由――それは、あの花を咲かせることができればラヴァループス侯爵の呪いは解けるとされているからだ。ルビーローズに対して異常な執着と反応を見せるのもそのせいだ」
「花が咲かなければどうなるんですか?」
「花が咲かないといずれ呪いが完全な形となって発動する。その暁には――いだだだだっ!!」
 クゥが遮るようにハリーの脛に噛みついた。
 今度は甘噛み程度は済まなかったようで、ハリーは涙目になっている。
「ハリー様!! クゥ、噛むのをやめて!」
 尋常じゃないほどの悲鳴をハリーが上げたのでエオノラは慌ててクゥにやめるようにお願いする。

 ハリーが話してくれた内容は誰にも知られてはいけない極秘内容。それなのにエオノラに易々と話したので、クゥは危機感を覚えて話を遮ったようだ。やはり賢い狼であることを実感する。
 クゥはハリーから離れるとバウバウと吠えて抗議した。
「たとえエオノラの屋敷通いが夏終わりまでだとしても、いいように使われるなんて公平じゃない。それにクリスは薬が効きづらくなっている。いつ非常事態になってもおかしくはない」
 ハリーの説明にクゥがぐうの音も出ないといった様子で頭を垂らす。

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