【短編】貴方だけを愛しています
良い看護師だったのか、わからない。

でも、なっちゃんが慕ってくれていた事は、看護師冥利に尽きるだろう。



「ありがとう、連れて来てくれて……」



「絶対、看護師に戻す」



病院を後にし、帰宅。

リビングでお母さんが淹れてくれた紅茶を飲んでると、お父さんが納戸から持って来た額縁に莉帆さんが絵を入れてくれる。



「ここが良いか?」



リビングの一角に並ぶ額。

たっちゃんやお兄様が取った宅建士や不動産鑑定士の資格証明書が飾られた壁に加えて提げられた。

その隣には、免許証は病院に提出してる為、戴帽式で貰ったナースキャップを付け、看護師免許証と丸筒を手に友達と撮った写真が代わりに飾られてる。



「良い表情してますね、唯来ちゃん」



「……カメラマンが、達也で余計にな;;」



「何かすみません;;」



「いや、本当の事なんだ……」



「どうしよ;;」



「ほっといて良いぞー」



「唯来、今日は眠れそうにないだろ。お父さんとお母さんと寝るか?」



「……ん?たっちゃんの部屋で寝てるから大丈夫」



「……あぁっ……;;」



「自滅すんな!情けねぇぞ、親父!」



まだ1年経ってないのに。

あの政略結婚の話がなかったら、こんな事にならなかったのに。




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