【短編】貴方だけを愛しています
「抱いてあげなさい」



「……っ、なっちゃん、ごめんっ……。なっちゃん、ごめんね……っ……」



茅先輩が許可をくれて抱き締める。

温もりも、抱き締め返してくれる事はない。

動かないなっちゃんに、謝罪しか出て来ない。



「葉山さん、貰って下さいますか……?」



「ナツキにとって、葉山さんは本当に、心の支えだったと思います。私が傍に居てやれない時も、葉山さんが居てくれれば、心強かったと思います」



「ナツキを、ありがとうございました……っ」



「ありがとうございました……っ……」



5分ほど抱き締め、ベッドへと寝かせると、なっちゃんパパから1枚の画用紙が差し出された。

壁に飾れていた1枚。

私の似顔絵。




「なっちゃんを受け持てて、幸せでした……。私こそ、ありがとうございました……っ……」



胸に抱き、頭を下げ返す。



「ナツキは亡くなりましたが、どうか、他の子供たちを、助けてあげて下さい」



「……はいっ……」



なっちゃんパパに送られ小児科病棟を出る。

たっちゃんにも頭を下げて去って行くその背を見送り、振り返ると、画用紙を指差された。



「良い看護師だったんだな……」



似顔絵を見せると、そう言って頭を撫でてくれるたっちゃん。
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