トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
唱馬って何を考えているのかよく分からない。
子犬みたいに可愛いかったり、ドーベルマンみたいに近寄りがたかったり、そんな風船みたいに掴めない不思議なところがどうしても抗えない彼の魅力の一つだった。
私自身も唱馬の魅力に抗えない。
軽自動車の前で遠い空を見てあれこれ考えていると、私の体が一瞬宙に浮いた感じがした。
「あ… キャーーーーーーー」
これは心の叫び声。
だって、だって、あの日以来、会っていない慈恩が目の前にやって来た。
私は直立不動になる。
唱馬の時とは比べ物にならない胸キュンが超高速で私の心臓に突き刺さる。
息ができない、まばたきもできない、慈恩の顔なんて0.5秒も直視できない。
「ごめん、待った?」
「え?」
私の声は蚊が鳴く声よりも小さかった。
体に力が全く入らない。
肺活量がゼロになった気分だ。
「いや、唱馬のやつが僕の代わりに高梨さくらに付き合ってって。
何に?って聞いたら、それはさくらに聞いてって。
あいつの両親が急にやって来たんだ。
慌てて本館に走って行ったよ。
でも、君の格好を見たら、俺は何をするのか恐怖になってきた」
そうだ、忘れていた…
私は、今、作業着を着て、ヘルメットをかぶっている。