小さな願いのセレナーデ
私は現在、もちろん桐友学園音楽教室に所属という形ではあるが、出張レッスンに加えて自宅でのレッスンがメインになっている。
特にこの辺りはバイオリンを習いたい人、子供に習わせたい人が多いらしく、遠くの教室に行くよりも近くの方が安心だという理由で始めた。嬉しいことに好評で、忙しく働かせていただいている。

ちなみに碧維は『楽器を壊しそうだ』という意見が多かったので、バイオリンを習わせるのは止めた。
本人が習いたいと言えば、やらせようと思うけれど……恐らく運動系の習い事の方が楽しくできるだろう。
どうやら昂志さんも、幼少期は落ち着きがなくやんちゃだったらしいので、まぁいつかは落ち着くと長い目で見ようと思う。



「はい、今日はここまでにしましょう」

時計を見ると、そろそろ三十分のレッスン時間が終わろうとしていた。

彼女は「ありがとうございました」と頭を下げて、バイオリンの片付けに入る。
バイオリンをクロスで拭いているのを見ながら──「来月の発表会、頑張りましょうね」と声をかける。
すると彼女も、微笑んで「はい」と頷いた。

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