小さな願いのセレナーデ
「昔、離婚前に実の父とラークホールのコンサートに行ったことがあって。ラークホテル……今はインターネクサスホテルになったけど、そこで食事をして、ホールでコンサートを見て、それがすごく楽しくて感動して……それでバイオリンを始めたの」
きっかけが優待チケットを貰っただとかそんな感じだったと思うけど、ともかく父と二人でお洒落をして、美味しい昼食を食べて、コンサートを見に行ったという記憶は今でも強烈に覚えている。
確かに父は私を置いて出ていったけれど、この思い出があるから、恨めずにいる。
「いつかはラークホールでソリストとして弾いてみたい、と思ってるけど、ソリスト向きではない音だって言われてるから……どうかなぁ」
その時、客演で見事なバイオリンソロを弾いていたのが、バイオリニストのゲルハルド・ヴィスカという人物。今はここウィーンの大学教授としても活躍していて──私はこの人に教わりに来たのだ。
きっかけが優待チケットを貰っただとかそんな感じだったと思うけど、ともかく父と二人でお洒落をして、美味しい昼食を食べて、コンサートを見に行ったという記憶は今でも強烈に覚えている。
確かに父は私を置いて出ていったけれど、この思い出があるから、恨めずにいる。
「いつかはラークホールでソリストとして弾いてみたい、と思ってるけど、ソリスト向きではない音だって言われてるから……どうかなぁ」
その時、客演で見事なバイオリンソロを弾いていたのが、バイオリニストのゲルハルド・ヴィスカという人物。今はここウィーンの大学教授としても活躍していて──私はこの人に教わりに来たのだ。