小さな願いのセレナーデ
しかも演奏終わり、この薔薇の花束も渡されたものだから、色んな意味で注目を浴びたのだ。
『Your prince?』だの『Propose now?』だのと散々言われてしまって恥ずかしかった。
いや、本当に私も彼が王子のように見えたのだけど。
「だって晶葉の演奏が聞きたくてね」とワイン注ぐ昂志さんは悪気のない顔。「おかげで仕事の皺寄せがすごい」と、さっきまで眉間に皺を寄せてキーボードを叩いていた姿が頭を過った。
「どうだった?ウィーンでの生活」
「すごく楽しかった。若い子達も多くて…みんな目標に向かってキラキラしてて、それを見て頑張らなきゃって思ったの」
そう言うと、彼はワイングラスを傾ける。
「晶葉の目標って何かあるの?」
「そうだなぁ、ラークホールでコンサートがしたい、かな?」
ラークホールとは東京の中心にあるコンサートホールで、ラークビレッジというショッピングセンターやオフィスビルなどが入る複合施設内にある。よくクラシック団体の定期公演も行われている、クラシックをやってる人には馴染みの場所だ。