小さな願いのセレナーデ
手でパンを小さくちぎりながら食べる顔は、幼い頃の私にそっくりだ。
顎の輪郭も鼻の作りもそっくりで、どこに行ってもママ似だと言われる。

だけどアンバーが強い薄い目は、彼に似ているのかも知れない。

「おいちぃ!」
そうして笑う口元も、彼の影を見る。

(でも茶髪と癖毛はどこから?)
少し薄れてきた彼の記憶を照らし合わせても、髪の毛は真っ直ぐな黒髪だった。
だけど碧維は、茶髪の薄い髪色に緩やかなウェーブがかかった髪の毛をしている。
綺麗な髪の毛だと思うが、どこからの遺伝子なのか不思議だ。


朝食を終えると自分の準備。肩まである髪の毛を一つに纏めて薄い化粧をする。朝の九時まで少し碧維と遊ぶと、家を出る準備に取りかかる。

碧維の登園時間は、クラスで一番最後。
保育園の時間は基本的には十八時まで。それ以降は延長の届け出が必要なので、私も迎えの時間は十八時と申告している。
だけど時短勤務の人も多いので、十八時迎えは最後の方。だから寂しくないよう、なるべく朝は時間を作って一緒に遊び、仕事に間に合うギリギリまで一緒にいてあげている。
おかげで身だしなみは最小限になったけれど。
< 30 / 158 >

この作品をシェア

pagetop